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2022年11月4日(金)


今年も秋のクラブランの時期になった。今年はとにかく天気に恵まれている。

10月の国東半島ツーリングも毎日快晴続き。今回の長野・岐阜地方もこの先ずっと晴れが続く。

クラブランとしては11/5〜11/6の1泊2日だが、自分はその前後を含めて3泊4日のツーリングとした。


一足お先に一人で旅立ちだ。

新宿からあずさに乗って、岡谷経由でみどり湖駅まで輪行する。


今日越える善知鳥(うとう)峠・牛首峠の記事をコピーして持ってきた。

ニューサイにもあまり紀行文がない。雑誌にもあまり取り上げられない峠だ。


初めて降りるみどり湖駅。驚いた。何もない。

誰もいないし、改札も無人。屋根もトイレも、そして店一軒ない。唯一あった駐輪場で組み立てる。


仲間とワイワイ言いながら走った前回に比べ、久しぶりのソロツーリングで調子がでない。

時刻はすでに10:30 あまりゆっくりはしていられないので、さっそく走り出す。


まずは善知鳥峠へ向かう。国道を避け、静かな裏道を行く。

駅からは国道に合流するまで緩く登っていく。いきなり峠越えのような雰囲気だ。


駅から15分ほどで国道に合流する。せっかくの雰囲気もここまで。平日なので交通量も激しい。

我慢して道路脇を注意して登って行くと、すぐに大きな「分水嶺」の赤い看板が見えてくる。

ここは自動販売機の置かれている店舗らしく、その先が善知鳥峠だ。


善知鳥峠と分水嶺公園

ここ善知鳥峠(八八九メートル)は、本州のほぼ中央に位置しており、太平洋斜面の南へ流れる天竜川と、日本海斜面の北へ流れる信濃川との分水嶺である。

古来、この地を「水の分かれ」と呼んでいる。峠道は、古代東山道として開かれた。近世からは、中山道の脇往還として、伊奈街道・三州街道とも呼ばれ、中馬等の往来も多く交通の要路であった。

山ひだをぬうこのような地形のところを、東国の方言で「ウト
ウ(坂峠)」と呼ばれていることから、善知鳥の地名になったと考えられる。

また、海鳥の「うとう(善知鳥)」をこの山に葬ったことからこの地名が生まれたという伝説も語り継がれている。
この分水嶺公園は、昭和四十九年六月竣工し、現在に至っている。



分水嶺とは

分水界、分水線、分水境界などという。雨水が異なる方向に流れる境界のことであり、水系と水系の境界を指す。
(水系とは集水域に流れる川の系統をいう)

至る所に分水界は存在するが、特に山岳地帯では山稜が境界になるので分水嶺という。

http://www.jac.or.jp/info/doukoukai/chiri/bunsuirei/bunsui_teigi.html



降った雨が、ここを境に太平洋と日本海に分かれる。それが分水嶺。

なんだかとってもロマンのある話じゃないですか。俺は太平洋、お前は日本海。お互い頑張ろう!なんて。

激しく行き交う車は、立ち止まることもなく分水嶺を通り過ぎていくが、なんだかじっくり味わいたくなってくる。


善知鳥峠はあまりに交通量が激しいので、峠越えの雰囲気を味わうことができない。

国道を下って、牛首峠への分岐に入るとほっとする。ここからしばらくは峠越えをじっくり味わえる。

少々雲が多い走り始めだったが、ようやく日が差してきた。


中部北陸自然歩道の案内に従って、牛首峠方面へ入っていく。

途中、小さな峠のような雰囲気の所に、立派な「津島神社」が山の斜面に佇んでいた。

ちょっと上まで登ってみようかと思ったが、かなりの急登なので写真を撮るだけにして諦めた。


牛首峠への道に合流すると、「初期中山道と一里塚」の案内が道路脇に建っていた。

読むと、諏訪湖から小野峠、牛首峠を越えて木曾へつながる街道だそうだ。


小野峠は以前越えたことがあり、なるほど、こうして繋がっていたとは知らなかった。

今日のツーリングは、ほぼこの「初期中山道」に沿って走ることになる。

初期中山道と一里塚

町指定史跡 昭和六十二年八月二十一日指定

初期中山道
江戸時代の五街道の一つ中山道は、慶長六年(一六〇一)家康の命をうけた大久保長安によって整備されたといわれる。

この時、諏訪と木曽を結ぶ街道として、下諏訪宿から三沢(小野) 峠を越し、小野宿を経て牛首峠を越え、木曽の桜沢に至る道筋が開削され、元和元年(一六一五)ころまでの十数年間、中山道の本道として利用された。
 
この街道は諏訪と木曽を結ぶには近道であったが、峠を二つも越し、しかも谷川沿いの難路であったためか、長安が没するとまもなく塩尻峠廻りの道筋に変えられた。

一里塚
この道筋に残る三か所の一里塚(跡)は、中山道として開削された当時のもので、慶長九年(一六〇四)頃の築造と推定される。
なかでも楡沢にある江戸より五八里の一里塚は、一対の塚がほぼ完全な形で残り、両塚の間を通った道筋も推定できる。
短期間とはいえ、ここを通った初期の中山道の姿をよく伝えており、交通遺跡として貴重である。

平成二十三年六月 辰野町教育委員会



すっかり秋の景色だ。見渡す限り山も里も秋の色合いだ。

とにかく静かだ。誰もいない、車も通らない。そして風も吹かない。


牛首峠へ至る道は路面もよく、道幅も広くて走りやすい。

一里塚から牛首峠まで約230mほどの登りだが、峠道の雰囲気が実に素晴らしい。

3泊4日の旅の初日、荷物が多くてフロントバッグが溢れんばかりだ。


時刻は12時。すでにお腹も空いてきたのだが、なんとか峠で昼飯にしようと頑張る。

峠まであと50mという所で、展望のいい絶好の東屋が現れた。

峠へ行ってもこれほどの好条件は揃ってないだろうと思い、ここでランチタイムとすることに決定。


まだまだこの先にきっと・・・なんて思っていると何もない。ツーリングではよくある経験だ。

見つけた時は確実に実行しておいた方が失敗がない、というのがこれまでの経験だ。


一人静かに展望ランチを楽しんでいたら、何やら上の方から賑やかな声が聞こえてきた。

なんと現れたのは5名のサイクリスト。どうやら何かのツアーのようだ。

先頭と後をガイドに守られた、男女合計5名が峠を下ってきた。


先頭はマイクとスピーカーで観光案内しながら下っていく。なので静かな山中もいきなり賑やかになった。

しかしこんなルートを行くなんて、なかなかしゃれた企画をするものだ。


峠まではあとわずか。再び静寂が戻った峠道をゆっくりと行く。

道端の落葉が実にいい色だ。寒くなく、風もない本当に素晴らしい雰囲気の道だ。


今回の秘密兵器、リア34Tの巨大なフリー。このおかげで、ほぼ降りずに走り続けられる。

カッコ悪いなんて言ってられない。もう昔のようなパワーは出ないので、こうして誤魔化すしかない。


牛首峠の由来が書かれている「牛首塚」の案内があるが、藪漕ぎの山中にあるため今回は見送ることにした。

緩く曲がったカーブの先が牛首峠のピークだ。

実に素晴らしいアプローチだった。久しぶりに峠本来の魅力を感じる道筋だった。


峠にはゲートが設置されている。積雪時には冬季閉鎖するのであろう。

ここの登山道との分岐には、山の斜面に小さな鳥居が建っていて、その先に山の神が祀られていた。


牛首峠の切り通しは、雰囲気のある昔ながらの峠だ。

落葉で埋もれた峠路の先は、この先どうなっているのかと早く覗いてみたくなる。


峠のピークに「林道牛首線」が分岐している。

鎖で進入禁止になっているが、ちょっと興味をそそる林道だ。

地図を見ると途中で途切れているので、たぶん行き止まりなのだろう。


峠からの下りも文句なしだった。とにかく素晴らしい紅葉の眺め。

右も左も、上も下も、どこを見てもこの色合いだ。そして青空がさらに美しさを盛り上げる。


車で通るには道幅も狭くて神経を使うが、自転車にとってはこれ以上素敵な道はないだろう。

どんどん下ってしまうのが本当にもったいない。コーナーごとに止まっては写真を撮ってばかりだ。


全く誰とも会わない。車一台すれ違わない。

こんな美しいダウンヒルも久しぶりだ。とにかく、何もかも文句なしの牛首峠越えであった。


国道に合流して、間違って旧中山道へ分岐せずに「桜沢トンネル」に入ってしまった。

1498mもある長いトンネルだ。トンネル内は登ってるし、歩道は狭くて走れない。


このトンネルは絶対に避けた方がいい。テールライトをつけていても怖いし、危険だ。

トンネルを抜けてようやく「旧中山道」を行く。国道とは別世界の静かな街道だ。


のんびりと街並みを眺め、駅に立ち寄りながら奈良井を目指す。

途中、徒歩で同じように旧中山道を歩いているシニアの方がいたけれど、さすがに徒歩は大変だ。


奈良井へ来るのも何度目かな。観光客も比較的少なく、静かで雰囲気のいい街だ。

平日にもかかわらず観光客の姿が目につく。「全国旅行支援」の影響もあるのだろう、きっと。

ゆっくり自転車を押しながら奈良井宿を歩く。


奈良井宿

中山道屈指の難所鳥居峠をひかえて「奈良井千軒」といわれ、木曽十一宿の中では最も賑わった宿場です。

町並みは国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されており、往時の面影を色濃く残し、奈良井川に沿ってつづく約1kmの街並みは日本最長の宿場です。

保存にとどまらず現在も人が生活している町というところも奈良井宿の魅力です。

https://tokimeguri.jp/guide/naraijuku/



奈良井宿からは鳥居峠を越えたいところだが、今日は時間がない。

以前越えた時も、素晴らしい景色に感動した。もう一度と思ったが、今回は新鳥居トンネルを行くしかない。


再び長く危険なトンネルのお出ましだ。しかしこのトンネルは歩道が多少広いので何とか乗車できる。

距離は1738m。「トンネル内は自転車を降りて通行して下さい」と書いてある。

しかし、歩いていたら いったい何分かかるのか? ということで、壁とガードレールに挟まれた狭い歩道を走り出す。


最初は順調だったが、半分ぐらいまで走った時に、バランスを崩して壁に腕をこすってしまった。

おいおい、なんだよ・・・腕は真っ黒に汚れ、肘を少々擦りむいてしまった・・・クッソー

白いシャツなので汚れが目立ってしょうがない・・・明日からクラブランだっていうのに。


肘はすぐにキズパワーパッドで治療。シャツは宿で洗濯することに。

せっかくここまでいい気分で走って来たのに、この一件で少々不機嫌に。


歩道が狭すぎるんだよ・・・あと30cm広ければ・・・自転車のこと考えてないよ、全く・・・

気分新たに走り出す。でもこんな雰囲気の中を行けば、すぐにまたご機嫌モードだ。


あぁ、何もかも綺麗だ。何か他の言葉で表現したいが言葉が見つからない。

3泊4日の初日からこんな素晴らしい紅葉を満喫してしまって、明日からいったいどうなるのかと心配になる。


そして本日の絶景No1が、この「巴淵(ともえがふち)」の紅葉だ。

突然視界に飛び込んできたこの鮮やかな”赤”は、あまりに美しすぎて思わず息を飲むほどだった。


時刻は15:45 宿まであと10kmほど。

時間にも少し余裕ができたので、ここの休憩所でコーヒーをいただくことに。


さすがにここは紅葉の名所らしい。周囲を散策しに観光客がやってくる。

今日は初ストーブだ。やっぱり、こうしたゆったりとした時間があると旅も充実する。

この景色の中でいただくコーヒー、旨いに決まってますね。


本日の宿、木曽福島まではずっと下り。あとはのんびりと散策しながら旧中山道を味わう。

何も下調べなく来たものだから、歴史も見どころもよくわからない。

もっとしっかり調べてから、じっくり楽しむべき街道だろう。簡単に通り過ぎてしまってはもったいない。


原野駅のそばまでくると、こんな「原野の石仏群」が現れた。

何だか峠の書籍に出てきそうな雰囲気だ。何を表現しているのかは定かでないが、かなり歴史がありそうだ。


その先に、「中山道中間点」の案内が現れた。

江戸と京都の真ん中と言われると、あまりに大きなスケールの話に驚くばかりだ。

中山道中間点

ここは、中山道の中間点、江戸、京都双方から六十七里二十八町(約二六六キロ)に位置しています。

中山道は、東海道とともに江戸と京都を結ぶ二大街道として幕府の重要路線でした。

木曽路というと深山幽谷の難所と思われがちですが、木曽十一宿が中山道六十九次の宿場として指定された慶長六年(1601年)ころからは整備も行き届き、和宮などの姫宮の通行や、日光弊使 ・茶壺道中などの通行に利用されていました。

英泉、広重をはじめ多くの文人墨客が数多く名作を残していることからも変化に富むこの街道は旅人の目を楽しませてくれたに違いありません。

木曽町



旧中山道は標識がしっかり整備されているので、実に楽しく辿ることができる。

のんびりしていたら、次第に日も落ちてきて、宿に着く頃にはかなり暗くなってきた。

実に充実した一日だった。十分な満足感とともに、本日の宿に無事到着した。


本日の宿は「自由旅クラブ 木曽 三河家」という宿だ。

昨今、一人旅だと何かと泊まりにくい所も多く、さらに料金もかなり高い。


しかし、ここはそんな一人旅の方にも最適な宿で、リーズナブルな料金でなかなかいい。

豪華さを求める方には向かないが、ソロツーリングなどでは十分だろう。


自由旅クラブ 木曽 三河家

幅広いお客様に、気ままで清遊な旅をお楽しみ頂けるよう企画した格安なお宿です。気ままにご宿泊頂けますよう、お食事は付いておりません。お客様のお好みでお食事をご予約下さいませ。

また、歴史深い、この木曽の地を拠点とすればドライブ感覚で近隣の観光地巡りや自然散策をお楽しみ頂けます。
晴耕雨読のような、気ままで自遊な旅をお楽しみ下さいませ。

http://kiso-mikawaya.com/


選んだ本日の夕食はからあげ定食。サイクリストにとってはカロリーたっぷりのから揚げがご馳走だ。

あとは20万図を片手にビールを飲んでいたら、いつものように最後は自分ひとりになってしまった。

自由で余計なサービスを省いているこの宿、なかなか使い勝手がいいと感じた。


さあ、明日は木曽福島駅に多くのメンバーが集まる。

天気も文句なし。駅まではわずかなので朝もゆっくりできる。

おっと そうだ、こうしてはいられない・・・洗濯しないと・・・

 

距離: 50.6 km
所要時間: 6 時間 37分 14 秒
平均速度: 毎時 7.6 km
最小標高:  748m
最大標高:  1073m
累積標高(登り):  643m
累積標高(下り):  662m

(2022/11/4 走行)


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