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「大人の休日倶楽部パス」とは、連続した日数で、JR東日本やJR北海道のフリーエリアで乗り降り自由。

しかも6回まで指定席も予約できる超おトクな切符だ。


毎年このパスを使ったツーリングのお誘いが来るのだけれど、なかなか都合が合わない。

会員になって数年になるが、今回始めて利用することになった。

4日間乗り放題、15270円のパスをゲット。5名で山形方面、2泊3日のツーリングだ。


初日の宿、肘折温泉をニューサイで調べたが、なんと紹介されているのはこの記事しかない。

我々5名も初めての温泉で、果たしてどんな温泉なのか期待に胸がふくらむ。


2022年6月28日(火)


平日の2泊3日の旅となると、問題は東京駅までの通勤ラッシュだ。

京都からのメンバーと合流するため、東京駅発9:24と遅めの新幹線に乗る。


すっかり通勤ラッシュが戻ってきた都会の電車。どうやって東京駅まで行くかが問題だった。

自分はあえて遠回りして、山手線を使わずに東京駅へ。時間はかかったが、トラブルなく到着。


埼玉組、千葉組も大変だったようだ。

3本電車を見送ったとか、朝からパンクして結果グリーン車で東京駅までやって来たとか・・・

やっぱり、輪行は朝一番が楽ちんです。通勤時間帯はもう乗れませんね、混んでいて。


京都からのメンバーも無事に合流し、ようやく乗車する時刻になった。

しかし、一気に旅行客が戻ってきて、ホームは団体客で溢れんばかりの混雑だ。


同じ車両に5台の輪行袋は無理があった。デモンタが3台。それも「ころころ仕様」だ。

輪行袋の厚みがあるため、座席のステップが邪魔で、座席の後に入らない。これは想定外!

車内販売のワゴンが通れないと車掌に注意されて、あーだこーだ悩みながらなんとか解決。


私の輪行袋はご覧の通り”超優等生”なので、別の車両の一番後ろに置かせてもらった。

「デモンタ+ころころ」システムは、早くて楽だけれど、やっぱり車内の置き場所には相当苦労しますね。


20万図を広げて3日間の概要を把握。

朝食を食べ、途中の「峠駅」を車窓から懐かしく眺め、約3時間で新庄駅に到着した。


日本列島は連日の猛暑。36℃、37℃は当たり前。それに比べれば新庄はずいぶんと気温が低くて助かる。

しかし昨日は東北地方は豪雨。宿からは本当に来るのかと確認の電話があったらしい。

とりあえず天気は回復し、蒸し暑いながらもツーリングのスタートを迎えることができた。


今回参加の5名の自転車だ。

先月5月のゴールデンウィークの時と同じメンバーだ。もうお馴染みのマシンばかり。

どれもこれも、よーく走り込んでいる「大人のランドナー」ばかりだ。


初日は距離30km少々の半日コース。まずは蕎麦屋で腹ごしらえ。

美味しい鳥そばをいただき、さあ山形の旅がスタートだ。

店の外へ出ると、熱風が襲ってくる。これでもまだ日本の中では涼しいほうなんだが・・・


日焼け止めをしっかり塗って、お店の冷たいお水をたっぷりボトルに詰めさせてもらう。

”こんな気温の中を、自転車で肘折温泉まで行くの!”

蕎麦屋の女将さんも仰天していたけれど、距離はそんなにたいしたことないんですけどね。


道路は路面もよく、交通量も少なく快適だ。

東北の農村風景が目の前に大きく広がる。美しい緑の中をまずは快走だ。


5万図も20万図も持ってきたけれど、こうしたコースではほとんど5万図は必要ない。

山の中に入って行かなければ、車用のロードマップとガーミンがあれば問題ないだろう。


ガーミンには今回アプリを追加して、画面下に6項目表示できるようにしてきた。

表示したい項目は、連携したスマホの画面からいろいろと選択できる。


やはり色々な情報が1画面で見ることができるようになって、とっても使いやすくなった。

肘折温泉への道路標識をよく見ると、なんと素敵な肘の温泉マークが! なかなかやってくれますね。


昨夜の様子をニュースでみると、新庄もこんな凄いことになっていたようだ。

一日ずれていたら、このツーリングもきっと中止になっていたかもしれない。


最上川を渡る。

自分の知っている最上川とは全然違う、泥水に覆いつくされた不気味な川と化している。


水田風景が続く中を順調に走る。気温はかなり高くなってきた。

登りに入ると汗が吹き出てくる。大量の汗で、シャツの色が変わってしまうほどだ。


この時期のツーリングは、とにかく暑さ対策が大切。

半袖短パンメンバーもいれば、しっかりニッカホースのスタイルもいる。

若いころは日焼けなんて気にせず、真っ黒になっていたけれど、もうこの歳では無理はできない。


土合トンネルまで登ってきた。やっと一息つける涼しさだ。

雰囲気のあるトンネルだ。車も全く通らず、ライトを点けて涼しみながらトンネルを越える。


トンネルを越えると一旦下り、肘折温泉への最後の登りが始まる。

撮影していて少々遅れても、見通しのいい道が続くので後続でも安心できる。

しかし、人の姿を全く見ることができない。いったい住民はどこにいるのだろう?


日本の棚田百選「四ケ村の棚田」の看板が建っている。周辺には棚田がいくつも点在している。

棚田が多いということは急斜面だということ。ここから一気に勾配もきつくなってくる。


ようやく畑仕事をしているお年寄りに出会った。

この暑い中、自転車で大汗かいて坂を登っているのも大変だが、炎天下の畑仕事も過酷だろう。


山道に入っても道路はとてもきれいだ。道幅も十分あり、とにかく舗装が素晴らしい。

標高も400mを越え、間もなく本日のピークを迎える。


さすがに暑さと、きつい勾配に降りざるをえない。汗が流れ落ちる。拭いても拭いても止まらない。

そんなダウン寸前の横を、誰かさんは異次元の走り。スイスイと通過していく・・・


湯の台牧場付近が本日のピーク。牧場と言えばこのサイロ。

サイクリストの間では有名ですよね。私も始めて出うことが出来た。

メーカー名なのか? それとも商品名なのか? 次のサイロはきっと”Huret”だよなんて言いながら通り過ぎる。


本日最後のトンネル、肘折トンネルが見えてきた。延長595mと少々長いトンネルだ。

緩く下った直線の先に、トンネルの出口が小さく見える。

トンネル内は薄暗く、路面は湿っていてスリル感たっぷりだ。


トンネルを抜けると、肘折温泉へ急降下する「肘折希望大橋」が視界に飛び込んでくる。

山中に現れた、あまりに異様な人工物だけに思わず立ち止まる。

ウィキペディアには次のように書かれている。
肘折希望大橋(ひじおりのぞみおおはし)は山形県最上郡大蔵村の山形県道57号戸沢大蔵線上にある肘折温泉と国道458号を繋ぐ橋(鋼製ラーメン構造桟道橋)。ループ状の2階建てのような形をしており、国道458号からS字カーブを描きながら温泉街へと下っていく2012年4月10日の地滑りによる道路崩落に伴い急きょ建設された。橋の長さは約240m。これは鋼製ラーメン桟道橋としては日本最長である


橋の上からは、下っていく姿を撮影するのにちょうどいい。

下から登ってくるには辛い橋だが、くるくる回りながら下るのは快適だ。


橋を下ると、いきなり温泉街に入る。現代から過去へ一気にタイムスリップしたかのような変化だ。

温泉街特有の風景が現れる。多くの宿の看板、曲がりくねった狭い道。浴衣姿で歩く宿泊客。

ようやく、1200年の歴史ある肘折温泉にやってくることができた。


「肘折温泉のはじまり」(掲示されていた看板を文字認識ソフトでテキスト化)

肘折温泉は、古文書によると西暦八〇七年(大同二年・平安時代)七月十四日に豊後の国(今の大分県)よりやってきた、源翁により発見されたと伝えられています。

伝説では、源翁が道に迷っていた時に洞窟でお坊さんと出会い、道案内をして、こう話しました。
「わしは地蔵菩薩である。百年前に、この崖から落ちて、肘を折った。
苦しくて苦しくてたまらなかったが、岩の間から湧き出る温泉を発見し、その流れる温かなお湯につかったところ、たちまち痛みがとれて、傷も治った。

この温泉の効き目は、まことに素晴らしい。できることなら、そなたにも、ここに住んで、この不思議なお湯のことを知ら
せ、みんなの病気の苦しみを治してくれないか。」
源翁は、お坊さんの頼みどおり、その洞窟を「地蔵倉」、温泉を「肘折温泉」と名前を付けて、守り続けたということです。

肘折温泉が温泉場として発展したのは、一三九〇年(明徳元年・室町時代)に月山登拝道として「肘折口」を開削してからで、一七〇九年(宝永六年・江戸時代)には二週間で一二、一一五人の参詣者が宿泊し、肘折温泉も大盛況だったという記録がある。

この頃から湯治場として発展したようである。毎年、七月十四日を開湯の日として湯神様に感謝し、先人の偉業を讃え、肘折温泉の発展を祈願する「開湯祭」を行っています。
そして、二〇〇七年(平成十九年)には、開湯一二〇〇年を迎えます。


あまりに汗をかきすぎて、ひと風呂浴びた後の乾杯が最高だ。

あっという間に缶ビールが何本も空になってしまった。


夕食は、我々だけの貸し切り部屋で贅沢に過ごす。

半日だけの走りであったが、とにかく家を出てから宿につくまでは大変であった。


暑さも強烈だったし、登りも意外ときつかった。

京都から延々乗り継いでやってきた。そして通勤時間の中、苦労して輪行してきた。

遠かった肘折温泉。ようやくのんびりできる時間が訪れた。


頑張ったあとのご褒美は最高だ。地酒利酒セットがなかなか楽しめる。

楽しく食事を楽しみ、そして二次会へ。

こうして「大人の休日倶楽部」初日は、アクシデントもトラブルもなく無事に終了した。


距離: 32.3 km
所要時間: 3 時間 46分 45 秒
平均速度: 毎時 8.6 km
最小標高:  64m
最大標高:  434m
累積標高(登り):  483m
累積標高(下り):  291m


(2022/6/28 走行)


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