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塩の道 千国街道


宿に置いてあった「塩の道 千国街道」のパンフレットより(信州小谷村 散策ガイドブック)


昨日の後半、最後は千国街道の「石坂越えコース」に沿って、来馬温泉まで走ってきた。

今日はその続き、「天神道越えコース」に沿って塩の道を行く。


「天神道越えコース」の詳細図。

自転車ではこのコース通りに走ることはできないが、葛葉峠を越えて平岩駅へ向かう。


2022年5月6日(金)


来馬温泉は、豊富な湯量と恵まれた泉質の源泉掛け流し温泉だ。

湯船から溢れる温泉は鉄分が豊富で、床も蛇口も赤茶色の色に染まっている。


窓を開ければ目の前の姫川を湯船から眺められる。朝風呂を一人で独占する贅沢さ。最高ですね。

部屋からは玄関が真下に見える。日帰り温泉の大きな看板と、我々の自転車が眩しい朝日を浴びている。


宿の玄関すぐ横にある蕎麦打ち場。温泉宿に蕎麦打ち場があるなんて初めてだ。

食堂からも蕎麦打ちが見れるようにガラス張りになっていて、「塩の道」や「小谷の本」などが展示されている。


朝食も素晴らしかった。

昨晩あれほど食べつくしたのに、朝になればまたこの食欲だ。


実にいい宿だった。また一つ常宿にしたくなる宿になった。

三日目も快晴。これだけ快晴が続くのも初めてかもしれない。

今日は最終日。帰りの列車の都合もあり、距離も登りも控えめだ。


さすがに体も疲れている。やはり二泊三日のツーリングは、この歳になるとこたえる。

今朝は9時前にスタートだ。まずは姫川に沿って葛葉峠を目指す。

すると、いきなりまたトラブル? 異音がするので調べたらダルマのネジが緩んでました。


国道から川沿いの道へ分岐すると、まったく交通量が無くなる。

こりゃ最高に気分がいい道だと喜んでいたら、今日もやはり出ました「通行止」。


もう毎日通行止めとご対面しているので、かなり感覚が麻痺してきた。

しかし、トンネル内は真っ暗で何も見えない。さすがにここに突っ込んでいくのは恐ろしい。

VOLT800の強烈な明かりで照らしてみると、トンネル内は問題なさそうだ。


今日も味のあるトンネル越えができて、カメラマンとしてはわくわくするばかりだ。

トンネルに入ると、なんと後からサイクリストが一人やってきた。


我々の姿に驚くこともなく、しっかりライトを付けて我々と一緒にトンネルを走り抜ける。

慣れているなぁ、地元のサイクリストだろうか?

トンネルを抜けて上を見たら「湯原隧道」の表示。特に問題があるとは思えないトンネルなのだけど・・・


一旦国道と合流するが、すぐにまた姫川沿いの旧道に入る。

自転車天国だと思う間もなく、すぐにまた洞門が封鎖されている。もう難所の連続攻撃だ。

しかしここは、脇から簡単に通り抜けることができるので簡単だった。


休日なので工事関係者がいなくて助かったが、作業中だったらまず通してもらえないだろう。

洞門内は工事資材置き場と化していて、塩の道の標識が山のように積まれている。

この先はいったい大丈夫だろうか・・・と心配していたら、ついに最大限のバリケードが出現した!


最後の出口、ここを通過できれば葛葉峠へ行くことができる。

戻るとなると、国道のトンネルを行かねばならない。さあ、突破する方法はあるのか?


このバリケードは強烈だ。完全に道幅一杯に木製の扉で封鎖し、かんぬきと板で開かないように固定している。

あまりの徹底さに腰を抜かすほどだった。ダメか? と諦めの境地になる・・・


しかし、よく調べてみると、鍵はかかっていないので、かんぬきを外せば扉が開けられる。

さっそく皆で作業して無事通過できた。問題はどうやって元に戻すかだが・・・

空身だと赤い鉄骨脇の外から回り込めるので、扉を元通りに戻して無事終了。


通行止めの連続でいったいどうなるかと思ったが、なんとか通り抜けることができた。

さっきのサイクリストは、この扉は突破せず、国道から湯原トンネルを通過したのだろう。


そこから葛葉峠までは10分弱の登りだった。

通行止めでまったく交通量がないおかげで、実に静かな峠越えを楽しめる。


ひっそりとした峠には、「旅人の宿」と書かれた休憩所がある。

グーグルストリートビューで見てみると、2014年8月の画像では多くの車が停車している。

工事関係車両ばかりだが、当時はまだここで食事も出来たのだろう。今では完全に閉鎖されているようだ。


峠からの下り、広い道幅のダウンヒルを楽しんでいると、異様にデカイ大仏の頭が視界に飛び込んできた。

なんだこれは? と調べようがないが、ちゃんと地図にマークがついている。

このあたりは白馬温泉と記載されていて、ここもかつては賑わったのだろうなと感じる。


峠から約200m下ると平岩駅だ。駅前には酒屋が一軒あるだけだ。

ガラガラと扉を開けて声をかけてみるが、まったく反応がない。

ここで何か食料を調達しようと思っていたが、まったく収穫ゼロだった。


自分はこの駅に来るのは2回目。

下の左の写真は1993年10月に食料品店で肉を調達している様子。


そうだこの店はまだやっているかな・・・とかすかな期待を込めて探してみるともちろんこの状態。

約30年前と家の様子がほとんど変わっていないのが驚きだが、さすがに商売はしていなかった。

宿で作ってもらったお弁当があるが、それだけでは満足できない面々。どこかにお店はないかと先へ行く。


本日前半の目標が葛葉峠。後半は大峰峠が待っている。

大峰峠は自分が30年前に越えた時は、まだ道路が開通していなく、峠付近は押し上げ状態の所だった。


懐かしい道筋を思い出しながら登り道に入る。

5kmで約400mの登り、平均勾配8%という厳しい登りだ。


雨飾山を背後に、綺麗な舗装路を登っていく。いきなりきつい勾配が続く。

車も全く通らなく、峠越えの雰囲気としては素晴らしいのだが、気温もかなり高い。


左の写真は30年前の、最後に食料を調達したお店。

まさかのまさか、この店が今でもやっていたらと期待したが、やはりそれは無理っていうもの。

当時の面影はそのまま残っているけれど、やはり年月を感じざるをえない。


三日目の疲れた体には、この峠道はなかなか手強い。

当時も確かにこの登りは辛かった。途中のヘアピンカーブで大休止した思い出がある。

30年後に同じ峠を越えようっていうのだから、それは大変なことに違いない。


登りの後半は、こんな赤い舗装が現れた。あまりの勾配に、滑り止め対策だろうか?

峠道の雰囲気も台無し、まったくセンスのない舗装だ。なんだこれ?

それにしてもひどい勾配だ。まるでジャンプ台を登っているかのようだ。


気温も上昇し、ますます条件が悪くなる中、このふざけた登りは体にこたえる。

昔も確かにきつかったが、こんな人情のない道ではなかった。

この道は単に車用に作ったもので、徒歩や自転車のことなど何も考えていない・・・当然です。


さんざん疲れ果てて、やっとの思いで大峰峠に到着した。

峠には大きな県道開通の記念碑と、小さな小さな峠の標が建っていた。


下の写真は30年前の大峰峠の様子。最後は山道を押し上げて登りつめた。

まったく展望がなく、小さな峠の標識と頭の上の高圧線が記憶に残っている。


峠からの下りではこんな残雪に行く手を阻まれた。

まだまだこの地方は冬の名残があちこちに残っている。ちょっと山に入ればこんな状況だ。


幸か不幸か、我々にとってはこうした状況が嬉しくもあり楽しい。

毎日毎日、通行止めと刻々と変化する状況を楽しんでいる。


変化のある、充実したコースに何も言うことがない。

いよいよこのGWの旅も、最後の目的地明星山へと向かう。

この山の圧倒的な迫力を再び味わいたいと思って、今回のコースに組み入れてもらった。


どこからでも目立つ明星山の姿。展望台からその全景が良く見える。

岩肌むき出しの石灰からなる岸壁は、日本有数のロッククライミング場として有名だ。


目の前の岸壁をロープにぶら下がり、そして真上に見上げる高さまで登る姿に釘付けになった思い出がある。

それはそれは、サイクリストでは絶対に理解不可能な別世界のスポーツだ。

今回のツーリングで、ぜひ他の仲間にも見せてあげたいと思っていた。


ところがどっこい、通行止めばかりであっちもダメならこっちもダメだ。

もうこの辺り一帯はどこもかしこも道路状況がメチャクチャだ。


最後の最後まで通行止めの案内に悩まされる。我々の行く先も通行止めの表示だ。

もう、飽きました「通行止」。たまには「通行可」の表示が見てみたい。


時刻はちょうど12時。結局何も追加で食料を調達できずにここまでやってきてしまった。

道路が通行止めとなると、観光施設も営業してない。

営業していないフィッシュセンターの東屋を見つけて、今日のランチはここに決定。


素晴らしい展望と素晴らしい東屋。なんでこういう時に食材が乏しいのでしょう。

だーれもいない、絶景の明星山を眺めながら、宿で作ってもらったおにぎりを美味しくいただく。

今日もジュージューしたかったのに残念だった。


いよいよこの旅最後の通行止めだ。ロープが張られ、全面通行止めの表示だ。

さすがにここを突破しようというおバカさんは誰もいない。しかしここを通過しないと、迂回路がない・・・

三日目になると、「通行止めは突破しなければいけない」、と何の疑問も抱かなくなる。


落石注意との表示なので、たぶん道路の崩壊ということではなさそうだ。

明星山の圧倒的な迫力がすぐそばに迫る。


そうそう、あの時はここからロッククライミングする人たちをじっと眺めていたっけ。

岩肌にしがみついて動けない人、何やらビバークしようとしている人、降りれない人? もう凄かった。


しかし今日は通行止めの影響で、ロッククライミングもすべて禁止のようだ。

そうだろう、こんな状況じゃ遊んでいる場合ではないだろう。

路面はこんな状況だ。大きな障害物が遠慮なしに転がっている。


まあ、三日間の走りからすればなんてことはない。

路面の崩落さえなければ、自転車はおおよその場面はクリアできる。

確かに車ではこの道は通行不可能だろう。山側から色々と崩れ落ちていて障害物だらけだ。


こうした場面を何度も経験してきているが、自転車の悪路の走破性、機動性というのは素晴らしいの一言に尽きる。

あらゆる場面で、最後に役に立つのは自転車ではないかと思うぐらい行動範囲は広い。

この三日間、毎日通行止めに遭遇し、あらためて自転車の能力の高さを再認識した。


この旅もフィナーレに近づいてきた。

チェーン切れから重傷を負ったK氏は、カーサイのデポ地へ戻るためにここでお別れだ。


あれだけの重傷を負ったにもかかわらず、なんとその後ノントラブルで走りきってしまった。

こうしたトラブル対応力と、運の強さ、体力、そして最後は「情熱」のおかげでしょうね。


糸魚川に向かって残りのメンバーがこの旅の余韻に浸る。

いつまでもどこまでも残雪の山々が見送ってくれる。


フィナーレにふさわしい姫川沿いの土手道。やっぱりランドナーでのツーリングはこうでなくっちゃ。

贅沢な「自転車道」だ。次第に近づく日本海。山から海へ、昨年の晩秋ツーリングと同じだ。

いい旅だった。素晴らしいツーリングだった。またしても記憶に残るツーリングとなった。


昨年の秋に続き、再び糸魚川の駅にやってきた。

時刻は15時。帰りの列車の関係で早めに駅に到着だ。


まずは輪行を終え、切符を手配する。ところが、こんな大きな駅なのにみどりの窓口がない。

新幹線の切符もすべて券売機で買わないとならない。これがまたとにかくわかりずらい・・・

いくらなんでもこれではお年寄りや、外国人の方では切符を買えないでしょう、なんとかするべし!


そして目立ったのがこのキャラクター「久比岐凛ちゃん」。久比岐自転車道にちなんでいるのでしょうね。

でもこんなステキな娘はどこにもいませんけど・・・


糸魚川駅周辺も実は結構さびれている。前回来た時も結構びっくりしたものだ。

この時間から営業している居酒屋を探すのに一苦労。


ようやく見つけたお店で最後の大反省会。

別れたK氏は今頃どこを走ってるかな? なんて気にしながら、おいしくビールをいただく。


糸魚川駅で京都と東京方面へ分かれ、この旅はフィナーレを迎える。

買い込んだお酒とおつまみで、この旅を振り返る。初日から色々ありすぎて、もう頭の中が一杯だ。


とにかく天気に恵まれた三日間だった。

やはり旅の善し悪しは、天気とプランニングにあり。間違いない。


 

距離: 42.4 km
所要時間: 6 時間 21分 27 秒
平均速度: 毎時 6.7 km
最小標高:  29m
最大標高:  663m
累積標高(登り):  673m
累積標高(下り):  1052m

(2022/5/6 走行)


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