峠への招待 > ツーリングフォトガイド >  ’2019 > 林道本名室谷線・塩ノ倉峠・湯倉温泉



NC339号(1992年9月)で紹介された、NC道案内「林道本名津川線」を越えるのが念願だった。

最初の挑戦は1993年11月。
八十里越えの死闘に心身疲れ果て、翌日の悪天候にこの林道を諦めざるをえなかった。

二度目の挑戦は、それから24年後の2017年11月。
なんとしても越えたいという願いもむなしく、最悪の土砂降り・・・

ホームに降りて皆で議論したけれど、結局断念。
またしても一歩も足を踏み入れることさえできなかった。

そしていよいよ三度目の挑戦。
これで越えられなかったら、もう体力的にも最後かもしれない、という感じだった。

私と隊長にとっては、この林道は諦めきれない、どうしても越えなければいけない林道だった。

2019年11月。恒例のクラブラン。
逆コースにはなるが、今度こそ条件が揃い、いよいよその時がやってきた。



年々衰える体力。薬と通院が欠かせない日々。 視力も、聴力も衰え、腰痛に悩まされる毎日。
果たしてこんな体でまともに越えられるのであろうか。

プロフィールマップを作成すれば、なかなかの走りごたえ。
ガーミンのアプリでは獲得標高1500mに達する。

釣瓶落しのこの季節に、スタートは10時。
間違いなくナイトランになる気配を行く前から感じていた。

集合は磐越西線の津川駅。
クラブのメンバーがそれぞれ集合し、一泊二日のツーリングを楽しむ。

輪行組、カーサイ組、そして前泊組と様々だ。
自分は腰痛解消のため、前日に軽いポタリングを楽しみ、津川駅付近に宿をとった。

いよいよ当日。
朝食を済ませ、宿を出る。
 


集合時間までは余裕があるため、のんびりと走り出す。

朝靄の阿賀野川。長い赤岩トンネルは、歩道がしっかり整備されていて走りやすい。
 


まずは自分が一番乗りで津川駅に到着。

予定通りメンバーが次々集まってきた。
昨年同様、メンバーの奥様が車で同行してくれるので、何かと助かる。

昨年も、本当に何から何までお世話になってしまい、もう欠かせない存在になってしまった。

今回こそは順調にいくかと思っていたのだが・・・
やっぱり、このメンバーが集まると何かと事件が起きる・・・

列車から降りてきたメンバー。いつもの面々の姿が・・・あれ?
なんか一人だけ両手に輪行袋をかかえているぞ? 誰かの分を持っている・・・なに?
 


自分の スマホに当人から連絡が入っていて、なんと駅で乗り遅れたらしい・・・どういうこと?

階段を下りてきたKさん、必死の形相で2つの輪行袋を抱えている! スゴイ! これはこれで驚き!

乗り遅れたって・・本人が乗り遅れて、輪行袋だけ乗ったの? もう意味不明。
 


昨年に続き、またしてもメンバーのトラブルで、一人スタート脱落。
次の列車に乗って、 またサポートカーのお世話になるという始まりになった。

さて、今年もクラブランがスタート。果たしてどんな珍道中になることやら・・・

今回のメンバーは、自転車11、サポートカー1 総勢12名。

初日は別ルートで宿へ向かう2名を除いた9名が、この本名津川林道へ挑む。
(正式には"林道本名室谷線"という名称のようだ)
 


走り始めてしばらくして、ビューンとサポートカーがやってきた。
「申し訳ありません・・・」と助手席から顔を隠して1時間後に到着。

ここで組み立てるかと思ったら、車で先行して組み立てて合流することに。

いやはや、このツーリング、果たしてどうなるのでしょうか?


しばらくしてサポートカーと合流。

追い付いたころにはすでに組み立てていて準備完了。そしてすっかり上機嫌で元気いっぱい。
そりゃそうでしょうよ、楽しいドライブして、登らずにショートカットしたんだから。

まあ、とにかくこれで全員揃ったわけで、遅れもなく予定通りだから、まぁいいとするか。

話は新潟駅での乗り遅れ事件で持ち切り。
またまたこの話で今宵は盛り上がりそうだ。

 


ここまですでに約23kmも走ってきた。

駅からは、細かなアップダウンの繰り返しで、いくらも標高を稼いでいない。
いくら走っても標高200m台だ。

自分や前泊組メンバーはさらに10キロ以上余計に走ってきている。
すでにそれなりに疲労感が溜まり始めている。

残りの標高900mを考えるとかなり厳しい状況が予想される。
唯一の救いは、かなり上まで舗装されているということぐらいだ。

しかし、初日の走りは皆重い。荷物も重ければ、体も重い。
寝不足、疲労、そして空腹と、初日はなかなか厳しい。

10時スタートでは、距離も稼げないうちに昼の時間になってしまう。

 


「林道本名室谷線 延長38,979m」の標識に導かれて、本格的な登りが始まった。

隊列も長くなる。
先行型もいれば、後方追いかけ型もいる。

撮影隊は常に後方にいる羽目になる。

放っておけば、どんどん隊列は散り始めてしまう。

先行する人は、自分より後方にいる人数を認識し、
最後尾の人は、先行する人の視界に入るよう意識しなければならない。
 


ペース作りも難しい。

先行者は読図、距離、標高差、時間、疲労度などを総合的に判断できる技量が必要。
好き勝手に自分の走りを楽しんでいたら、集団でのツーリングは難しい。

立派な林道の案内板で全員集合。
時刻12:20 標高はようやく300m まだまだ先は長い。
 


腹の減り具合は人それぞれだが、次第にエネルギー不足のメンバーは元気がなくなってくる。

ジャブのように細かなアップダウンがやがてじわじわと効き始めた・・・
 


周囲はすっかり秋景色。

しかし、 のんびりしている余裕はない。お腹は空いたが、さらに頑張って登っていく。

ついに隊長もグロッキー・・・ハンガーノック寸前で足取りも重い。
 


このままでは時間に追われ状況は悪くなるばかり。

先は長いが、すぐに昼飯にしてエネルギーを補給し、荷物軽減ということに。
 


時刻は13:20 もう限界。

適当な広場もなく、林道の端っこに並んでのランチタイムの開始だ。

待ってましたとばかりに、持ってきたスペシャルメニューを披露する。
時間がないから、本当はサッと食べてすぐに走り出したいところ・・・

しかし、この時間を楽しまずにいったい何を楽しむのか・・・
というわけで、制限時間を設けての忙しいクッキングが始まった。
 

さあさあ始めますよ

私はワンタンスープ

まずはおでんから

いろんな棒ラーメンが勢ぞろい

オリーブオイルで炒めてます!

これ便利だなぁ



棒ラーメンにスペシャルトッピング!
オリーブオイルで炒めた、特製野菜炒め入りの絶品ラーメンだ。

なんたってもやしとコーンがうまいねぇ!
もちろん、餅、イカ天、ネギ、ほうれん草、にんにくなんかも入っている・・・

食後はドリップコーヒーまでいただいちゃって、満腹のひと時でした。

 



プランニング段階で、この林道をいろいろ調べたが情報がほとんどない。

以前から車で通り抜けることは不可能で、常に工事中という状況なのはわかっていた。

さらに不安なことは、先月日本中に被害をもたらした台風の影響だ。

ここ津川地域でも、阿賀野川の浸水被害が出ている。

果たして、山の中は一体どんな状況なのであろうか?

小さな林道など、倒木や道路崩壊、陥没などあればすぐに通行不能だ。

バイク、自転車での投稿もあったが、すべて台風以前の情報だ。

情報を得ようと自治体のHPを詳しく調べてみたが、結局は現地へ行ってこの目で確認するしかなさそうな状況だった。

 



たっぷりエネルギーを補給して、全員体力回復。
さあ、これからが本番。

時刻は14時、残りの標高差600m。 どう考えても日没突入・・・
果たして、このメンバー、この先どうなるのでしょうか?

熊鈴をつけて、登り始める。

 


ランチタイム以降、周囲はどんどん山深くなっていく。

ラーメンで水を使い果たし、豊富な湧水でボトルを満たす。

色づきも一段と良くなり、静寂の林道に熊鈴の音が響き渡る。
 


路肩には深く積もった落ち葉の絨毯。

きつい登りだが、有難いことに舗装されているおかげで何とか乗っていける。
 


こんな山奥でも車がやってくる。
いったい何しに来ているのかと思ったら、なめこを取りに来ているらしい。

登って行った車もしばらくすると戻ってくる。
やはり車はこの先通行止めになっているようだ。

標高も900m付近になると、かなり展望が広がってくる。
時刻は15時。やはり1時間300mのペースだ。
 


15:53 長かった登りも終わり、ようやく県境に到着。
立派な記念碑が建てられていて、峠越えのような達成感を味わえる。
(ここが塩ノ倉峠という名称らしい)

大きな広場になっていて、車は皆ここでUターンするのだろう。
通行止めのゲートの先は、ついに荒れたダートが待っている。
 


大展望が広がる。出来ればここでランチタイムとしたかった。

しかしすでに時刻は16時を過ぎた。
かなり危険な時間にお山のてっぺんにいる。

さてここからが本日のクライマックス。
この先の道がどうなっているのかわからないが、何が何でも下るしかない。
 


ここまで来てしまったら、もう戻る手はない。
運を天に任せ、さあダウンヒルの開始だ。

かなり手強いダートだ。
太いタイヤでなければすぐにハンドルを持っていかれる。

自分が38Bでフラフラ下って行くと、その後ろから42Bの弾丸超特急が追い抜いて行く。

大きな石がゴロゴロ転がっていたり、深い溝や砂利に埋まってまともに走れない。
深い落ち葉の下に石や枝木が隠れていたりと、緊張感の連続だ。

 


下りで一息つく。

ブレーキレバーの握りっぱなしで、手首も痛いし、首、腰への負担も激しい。
そして喉が渇く。ダートの下りって、こんなに喉が渇くんだ・・・

いよいよ暗くなってきた。
この先、無事に宿に到着できるのでしょうか?

年々ナイトラン対策が充実してきた。
さすが、何年も暗い中を走っていると、やはり色々と学習してくる。

いざ暗くなってきても、大した驚きはない。
またか、というぐらい覚悟と装備が整っている。

豊富な食料と、頼りになる電装。願わくば、快晴の月夜の明かり。
状況に恵まれれば、ナイトランの不安もかなり軽減される。
 


日没後、ダートの下りに入ってしまうと、何より大切なのは 正確な状況把握と、冷静な判断力、視力の良さ、
そして何と言ってもライトだ。

すべての不安を取り除いてくれたライトが、VOLT800だ。
驚異的な明るさに惹かれ、すぐに手に入れたライトだ。

ナイトランとは、こんなに明るく楽しい物だったのか! と勘違いするほど驚異的な明るさだ。
カメラやビデオの照明代わりになるほど、周囲を明るく照らしくれる。

暗くなればなるほど、ダートの路面は判別つかないほど色々な物体が視界に入る。

視力の低下もあって、葉っぱなのか、岩なのか、枝なのか、水たまりなのか・・・
そんじょそこらのライトでは判別がつかない。

 


岩だと思っていたら葉っぱだった・・・
溝かと思ったら自分の影だった・・・なんてことは当たり前だった。

しかし、VOLT800の明るさはそのすべての不安を解消してくれた。
日中と変わらぬ明るさを放ち、3台後方から周辺を照らすほどのパワーだ。

何もかも色を判別でき、形、大きさを見極められるほどだ。
結局、巡航スピードが速い。

恐る恐る下るのと比べ、はるかに速いスピードでダウンヒルできる。
これは凄いことだ。

あまりに暗いと、もう乗車できず降りて歩くしかない。
そんな不安をすべて解消してくれるほど頼りになるライトだ。

 


今回このVOLT800を装備してきたのは自分ともう一人のメンバー。
うまい具合に二手に分かれて、ダウンヒルをサポートした。

試しに消してみると・・・恐ろしいぐらい真っ暗な闇が迫ってきた。
ありがたや、最新兵器。買って、ようやく本領発揮となった。

もう、他のライトを使う気になれない。

ピークから宿まで約800mの下りだ。
日没後のダートのダウンヒルだ。どれだけ時間がかかるか見当がつかない。
 


もし誰かパンク、メカトラ、負傷などしたらもうアウトだ。
ギリギリの時間の中で、慎重に、そして正確に、焦らず下って行く。

もしソロだったらと思うとぞっとする。
メンバーの声やライト、そして熊鈴の音で不安も寂しさも解消される。

そしてとうとう現れた最大の難所の崩落地点だ。

ここの場所は事前に確認していたが、どういう状況になっているか全くわからなかった。
自転車ならなんとかなると思っていたが、やはりこの目で見ないことには不安だった。

現場はかなり工事が進んでいて、崩落個所を自転車を抱えて歩いて突破できるほどになっていた。
もう少し難儀するかと覚悟していたが、これでかなり先が明るくなってきた。

 


先行隊には全く追い付かない。

ということは、何もトラブルなく下っているということだ。
この激しいダートの下りの中、パンクもせず、ノントラブルとは幸運だ。

ついに宿の明かりが見えてきた。 なんて安心する明かりなんだろう。
あそこへたどり着けば、あの暖かい女将が待っていてくれる。

そう思うと思わず安心感がこみ上げる。
18:20 遅くなってしまったが、無事に宿に到着。

迎えてくれたのは、若女将と、若若女将。
大きくなりましたねぇ、またお世話になります。

 


別ルートの二人と合わせて、全員ここで集合。

さあ、後は説明不要の宴会の始まり始まり〜

見事なおもてなしと、最高の料理にお酒が次々と・・・

いやぁ、これだけ走って、これだけおいしい料理を堪能できるとは。

 


話題に事欠かない一日になって笑いが尽きない。

恒例(高齢)ナイトランも無事?(額にケガをした人がいるそうな)に終わり、 楽しい宴は延々と続くのでありました。

いやはや、またしても記録に残るツーリングになりました。
 

(2019/11/3 走行)


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