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雨の朝は気分も冴えない。とりあえず朝風呂で目を覚ます。

いい湯だ。このままずっと宿でのんびりしていたくなるような気持ちのいい湯だ。
 


朝食は一階の部屋で一人でいただく。
いつものように食欲は旺盛だ。一粒残さずすべておいしくいただいた。

やはりりんごがうまかった。そしてりんごジュースも格別、さらにコーヒーまでしっかりいただいた。
 


静かでいい宿だった。ゆっくりとくつろぐことができた。やはり平日の旅は静かでいい。

スタートから雨具を着て走る。宿からは一旦300mほどのダウンヒルが待っている。


まだ霧雨なので雨具の上だけを着て走り出す。

気温はかなり低い。すぐに景色が一変してきた。


道路
の路肩にはまだ大量の雪が残っている。そしてほとんど先が見えない激しい濃霧だ。

昨日の天気がどれだけまだよかったか、あまりの変化に驚くばかりだ。
 


前方から来る車が直前にならないと見えない。視界は20mぐらいしかない。

交通量が多いわけではないが、安全のためLEDライトを点滅させて走る。


前方の道がどうカーブしているのかさっぱりわからない。おのずとスピードを落として走らざるをえない。

防水のためグローブの上に使い捨て手袋を重ねる。サドルもカバーをつけて雨から守る。


交換してきた新品のクールストップがよく効く。

最悪の条件の中、唯一快適なのはブレーキがよく効くことぐらいか・・・
 


何も見えない。岩木山もどこにいるのか皆目見当がつかない。なんという天気なんだ・・・あきれるほどだ。

風がないだけまだ救われる。心が折れそうな状況の中、寒いがまだなんとか走り続けられる気温だ。

こんな経験も珍しい。長いサイクリング人生の中でもこんな景色は初めてだ。
 


東京はすっかり桜も散って初夏のような陽気なのに・・・東北の春はまだまだ遠い。一気に真冬に逆戻りだ。

こんな状況の中では、人間も自転車も全く無力だ。トラブルが発生すれば危険な状況にもなりかねない。


無理せず
慎重に下る。ガーミンだけがしっかりと道筋を示してくれる。GPSはこうした時に本当に心強い。

装備はしっかりしているから安心だ。頭の先から足の先まで雨対策は万全。食料もあるし燃料もバッテリーもある。

装備に余裕があると心にも余裕が生まれる。こうした準備がすべての安全につながる。
 


下りきるといくらか視界が晴れてきた。本当に激しい濃霧だった。

再びピークに向けて登り返すと、なんと空が明るくなってきて一瞬青空が見えてきた。


まさか
奇跡が起きるのか? と期待したのもつかの間、また再び空が深い雲で覆われてきた。

雨があがっても寒くて雨具が脱げない。そのまましばらく雨具を着たまま走る。
 


深い霧の先にようやくピークが見えてきた。厳しい状況もここまでだ。

今日のコースは長距離だ。気を引き締めて下る。


相変わらず
車はほとんど通らない。ネックレスロードの桜もまだ蕾だ。かすかにピンク色の道が前方に見える。

弘前城が満開と聞いて期待してやってきたが、まだ全然早かった。残念というより計画が甘かった。
 


宿に飾ってあったポスターのような景色には程遠いが、それでも下った先に桜並木がやっと登場してきた。

ようやく出会えたネックレスロード。少々寂しい姿だが、それでも延々続く桜並木はやはり見事だ。
 


GWの頃はどんなに美しい景色を見せてくれるのだろう。目の前の姿を想像するだけでワクワクしてくる。

もう少し暖かくなれば、このネックレスロードの景色も一変することだろう。


今は
通り過ぎる車も少なくどこでも写真を撮り放題だが、そのうち駐車だらけの大混雑となりそうな感じだ。

考えてみれば、これほど空いた道を自由に走れてよかったのかもしれない。そう思えば上出来だ。
 


本日の後半は、まず独狐(とっこ)の森でランチタイムを楽しむ。

りんご畑を見下ろす高台にある公園で、宿で作ってもらったお弁当をいただく。


眼下一面に、見渡す限りの
りんごの木が広がる壮観な眺めだ。

絶好のロケーションに用意されたベンチ と水飲み場。お湯を沸かして食後のコーヒーを楽しむ。
 


ここ独狐の森公園は、映画「奇跡のリンゴ」のロケ地でもある。

無農薬のリンゴ栽培に苦労する姿を描いた物語だが、事前に本も読み映画も見てきた。


自分はりんご
栽培の苦労をこれまで全く知らなかった。何も知らずにおいしくりんごを食べてきた。

この映画を見て、そして本を読んでりんごに対する認識も見方もすっかり変わった。


それほどこの物語は感動的で素晴らし物語であった。
ぜひ、このロケ地を訪れたいと思っていた。

映画のシーンが目の前の景色と重なる。ランチタイムには最適の公園だ。
 


弘前まで再び戻ってきた。この先は市内へは立ち寄らず、土渕川沿いの「子供の森自転車道」へ向かう。

しばらく交通量の多い中を我慢して走り、ようやく自転車道の入口にやってきた。

大きな案内板に導かれて走り始める。ここも誰もいない、無人の自転車道だ。
 


川沿いの平坦な道なので快適だ。

りんご畑のすぐ横を自転車道が縫うように続いている。天気が良ければここからの岩木山もきっときれいなはず。


適度な
距離と変化のある道筋でなかなか面白い。

自転車道の最後、車道に合流すると一気に子供の森への急登が始まる。
 


その先は東北自然歩道の案内に従ってさらに登っていく。

ほとんど通行する人も車もいないのだろう。路面には小枝や落ち葉、枯草などが散乱している。

鬱蒼とした森の先に光がさすピークの風景は、なんだか神秘的な雰囲気も漂ってくる。
 


下りも路面が荒れているのでゆっくりと行く。
残りの距離から到着時刻を予想し、ペースを考える。

すでに走行距離は60kmを越えた。まだゴールまでかなりある。


ガーミンが到着予想時刻を表示してくれるが、平均時速からの予想だから、直前まで来ないとあてにならない。

宿直前でコンビニを発見し、つまみを仕入れて宿に到着した。


本日の走行距離85km。いろいろあったけれど、よく走った一日だった。

やっぱり、いっぱい走るとビールがうまいね。


明日は
さらに気温も下がり、雪の可能性もあるという。

20万図をつまみに、作戦を練って本日はおしまいとなった。
 

 

 

(2019/4/25 走行)


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