峠への招待 > ツーリングフォトガイド >  ’2019 > 洽仁峠・黒石サイクリングロード




青森の
旅も最終日だ。毎日天気が気になる。そしてどんどん悪くなる。

今日はなんと雪になるかもしれない。そしてとにかく気温が低い。本当に冬に逆戻りだ。


今朝も
早くから目覚める。一人旅だと朝も早い。

5時に起き、6時に朝風呂、7時半に朝食、そして8時には準備も整う。


ここの宿はご主人がバイクライダーのため、バイク仲間の常連さんがやってくる。

朝はそんな方と一緒に会話しながら朝食をいただいた。

自分も現役バイクライダー(今はスクーターですけど)なので、あれこれと会話が弾んだ。
 


外へ出ると冷気で身震いする。まだ降ってきてはいないが、早いうちにピークまで登っておきたい気分だ。

走り始めると、周囲の雰囲気は「晩秋」の気配だ。これから冬を迎える感じに近い。


風が
出始め、辛い登りの上に向かい風で押し戻される。スタート直後からなかなか厳しい状況だ。

指先も痛くなってきた。靴は穴あきのMTBシューズのため、すでに足先が痛いほどだ。
 


太陽が恋しい。ここしばらく明るい太陽にお目にかかっていない。

日がさせばこの寒さも一気に吹き飛んでしまうのだが、そんな気配はみじんもない。


路面に雪はないものの、道路脇には残雪が至る所に残っている。

真冬にはいったいどれだけの積雪があったのだろうか。


ピーク
の少し手前、左カーブの道路脇に何やら大きな石碑がある。

よく読んでみると「峠」の文字が確認できる。こんなところに峠などないのだが・・・


自転車のスピードだから気づいたものの、車や下りだったらあっというまに通り過ぎてしまうだろう。

「洽仁峠」と書いてある。最初は何て読むのかわからなかった。
 


すぐ横に「こうじんとうげ」とくりぬかれた、古ぼけた鉄製の案内が建っている。

こんな不思議な作りも珍しいが、なぜここに峠が存在するのかさっぱりわからなかった。


地形上のピークはもう少々登ったところであるし、峠らしい雰囲気も見当たらない。

まあ、時々地図にも載っていない峠に出会うこともあるが、帰ったらよく調べてみよう。

 


石碑の下には下の写真用のような詩が刻まれている。

洽仁會歌より」とあるので、そこから引用したものだろうか?

詩の意味も出所も全く分からず、どういう峠なのか気になるばかりである。
 


 



帰宅後いろいろと調べてみたが、この峠の名前も、洽仁會歌」という存在もネットでは検索できない。

カシミール上の地図や5万図には確かに記念碑の地図記号が載っていて、徒歩道上にある。(峠の名前は自分で入力)
 



峠のすぐ先で車道のピークを迎える。標高は約500m。さすがに残雪の量も多い。

寒い。日があたらず残雪の冷気のそばを走ると一段と体が冷える。指先足先もかなり痛くなってきた。


これで降ってきたらきっと雪になるなと感じる寒さだ。

桜を見に来たのに雪になるとは・・・まさかですよね。


寒さに耐えきれず、虹
の湖公園で休憩。といっても暖まるものは何もない。

東屋で地元の釣り人と 会話をしたが、この気温に驚くとともに、寒くて釣りも不調らしい。
 


ついにパラパラと雨が降ってきた。風も出てきてますます体感温度は下がるばかり。

とうとう最後の手段、ダウンベストを着るまでになった。


まさか着ることになるとは思っていなかったが、持ってきて本当によかった。

道の駅に逃げ込む。建物の中に入ると中はポカポカと暖かく別世界だ。

外でゲートボールやっていたお年寄りたちも、この寒さで建物の中に引き上げてきた。
 


温かい缶コーヒーを飲むがすぐに冷たくなってしまう。

どこか風をしのいで、火を使える所でランチにしたいと考えていた。


黒石温泉
郷まで来るとかなり賑やかになってくる。温泉の入口辺りに共同浴場を見つけた。

どれどれと覗いてみると営業中止のお知らせだ。時間もあるし暖まっていくか、と思ったが残念。


すぐそばには
「津軽こけし館」が営業している。

バスで到着した観光客が中に入っていくが、とにかく寒くて皆足早だ。

雨も強くなってきた。雨風しのげて、誰も来ない共同浴場の椅子に座ってランチタイムにすることに決定。
 


ランチタイムと言ってもまともな食料は持っていない。さばの水煮をメイン料理に、各種おつまみで腹ごしらえだ。


営業中止の
共同浴場にやってくる人は誰もいなく、しばらく暖かい小屋の中で生き返らせてもらった。

サバ缶ブームだが、確かにこれ一つで十分なメイン料理になる。とにかく温かい食べ物が冷えた体にありがたい。


寒すぎて
、詰め替えてきたガスでは火力も弱めだ。ボンベにお湯をかけると勢いが増すがすぐに弱くなる。

久しぶりだ、こんなに弱い火力のバーナーは。天気予報を見れば、さらにどんどん気温は下がるらしい・・・

たっぷり休憩して、この状況を仲間に伝え、もうやめた方がいいとアドバイスを受け、さあ雨の中へ走り出す・・・
 


装備は完璧だ。

グローブの上に作業用の軍手、さらにその上に防水用使い捨て手袋だ。これで手は完璧。


足は
MTBシューズではもはや耐え切れず、完全に靴を覆えるレインシューズカバーを履く。これで足も完璧。

着るものは、下着の上にサイクリングジャ−ジ、その上にウィンドブレーカー、さらにアウターウェア、そして雨具。


なんと
5枚も着て走ることに。手も足も体も自由が利かない、だるま状態で走る。残っているのは着替えの下着だけ。

もはや快適なことは何一つなくなってきた。


黒石
自転車道を行くが、眼鏡についた雨粒で視界も遮られる。

まあ、こんなツーリングもある。来れただけ感謝だ。またいつか来よう・・・なんて考えている時だった・・・

舗装された自転車道、特に荒れているわけでもなくゆっくり走っていた。
 


突然ハンドルを持つ手が重くなってスピードが落ちた。まさか・・・パンクだ!

なんで? 何か踏んだ? 何もなかったし、段差もなかった・・・タイヤを覗くとベコベコだ・・・


最悪
だぁ。こんな天気の中、雨から逃げる建物もない。さすがに雨の中でパンク修理はできない。

押して戻る。屋根があるところまで歩く。もういやになる。なんという試練だ・・・


ちょうど
作業現場の駐車場が空いていたので、挨拶して場所を借りる。

大丈夫ですか? どこからきたんですか?」とこの異様な姿の変人に話しかけてくれる。


驚いたでしょうね
、いきなり現れてホイールばらしてパンク修理始めたから。

原因はよくわかないが、じっくり調べている状況ではないのでチューブを交換してすぐに復帰できた。

後で調べたら、バルブの根元の空気漏れだった。タイヤに問題があったわけではなかった。
 


もうこれで戦意喪失だ。これ以上頑張って走ってもきっといいことはない。

予定を切り上げて、近くの駅で終わりにしようと思った。


唯一の
避難場所が橋の下だ。ここしか雨から逃げるところがない。

しかし逃げたところでどうなるわけでもない。一服してすぐに走り出すしかない。

せめて黒石自転車道を最後まで走りたいと思っていたら、なんとさらに試練が目の前に・・・
 


自転車道前方に大きな雪の壁が出現した!

残雪の処理のため、自転車道上に除雪した雪を積み上げているではないか・・・


目の前では重機が休みなく作業している・・・迂回してくれということだ。自転車の事なんか考えていない・・・

まあ、そうだろうな。雪解けしたばかり、誰も使わない自転車道は絶好の作業場だろう。

なんと6/30までは通行できないと書かれてあった。えっ、そんな先までかかるのか・・・それじゃしかたない。
 


迂回して車道へ出ると、なんとそこには信じられないような美しい桜並木が待っていてくれた。

黒石さくらまつり」の東公園だ。4/20に始まったが、生憎の天気でほとんど誰もいない。

なんだか運がいいのか悪いのか、こんな絶景を一人で楽しむことができた。
 


自転車道も終わりに近づいてきた。
ただただ辛い道のりだった。

それでも装備が完璧だったので、開き直って楽しむことができた。

さてどこの駅を目指して走ろうかと、地図とガーミンで作戦の練り直しだ。
 


予定では新青森までポタリングする予定であったが、のんびり走れそうな道はない。

交通量が多く、車道を行くにはストレスだらけだ。


農道を
行ってみるがダートの路面に水たまりだらけでこちらもストレス。

軽量タイヤでは少々不安もあって、一番近い奥羽本線の浪岡駅をゴールとすることに。
 


早い時間に駅に到着。この悪天候の中無事にゴールできたことにホッとする。

着ているものを脱ぐだけで大変だ。そして片づけるのに時間がかかる。

なにもかもぐちゃぐちゃで輪行するのも大変だった。
 


新青森へ移動する。待合室はどこも満員だ。寒くてホームで待つ人は誰もいない。

たっぷりお酒とつまみを用意して新幹線に。


もうあとは飲んで食べて、ビデオを振り返っていれば東京だ。

青森・弘前を巡る旅は、さんざん天気に悩まされた、思い出に残るツーリングとなった。
 

 

 

(2019/4/26 走行)


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