峠への招待 > ツーリングフォトガイド >  ’2018 > 馬坂峠(帝釈峠)・土呂部峠



参加者11台のラインナップ



二日目の朝。部屋の窓を開けると、冷気で目が覚める。

今日も快晴、無風、晩秋の峠越え日和だ。


すでに朝風呂に入り、身支度を整え準備万端のメンバーも。

朝食は6:30 というクラブラン史上最も早い集合命令となった。
 


昨日の夕食がボリュームあり過ぎて、いつものようにご飯が進まない。

それでもやはりサイクリストの食欲は半端ない。お味噌汁もすべて飲み干してご馳走様でした。
 

宿に頼んだお弁当を受取り、お土産までいただいて走り出す。

今日もサポート隊に、輪行袋など不要な荷物を預けてのスタートだ。
 


予定のあるT氏とはここでお別れ。

一人減って寂しくなってしまうが、やはり今回もお世話になりました。お気をつけて。


時刻は8:20 こんな朝早くから走れて幸せだ。

帝釈峠への分岐に向けて走り出す。

昨日の疲れと、寝不足、そして食後が重なって体が重い。
 


今日のルートは時間が読めない。まずは、馬坂峠(帝釈峠)までの登りにどれだけ時間がかかるのか。

峠の標高1780m。宿からの標高差約850mだ。


積雪があるかもしれないし、峠付近の崩落情報もある。

10年前の経験から、かなり難儀する峠であることは予想されていた。

林道へ分岐すると、さっそくお知らせが掲示されていた。

「積雪のため林道川俣檜枝岐線の左惣沢から先は冬期通行止め」

 

やっぱり積雪の時期なんだ。しかし、今日の天気ではそれほど心配はいらないだろう。

そして道路脇には、「帝釈山登山口 車で約35分」の標識が建っている。

車で35分 → 自転車で何分だろう・・・あまり参考にはならないが、おおよそ5〜6倍かかるのではないだろうか。

登り標高850mということは、おおよそ3時間みておけばよさそうだ。
 


先頭から遅れてしまった3人で行く。

こんな景色のいい林道は、そんなに飛ばしちゃダメでしょう。

おしゃべりしながら、あちこち写真を撮りながらポタリングモードだ。


林道前半は、川に沿ったきれいな舗装路がゆっくりと続く。

熊鈴をつけた2台が、チリンチリンといい音色を奏でる。

熊も当然いておかしくない。そしてすでに携帯電話も通じない。それだけ山深い。
 


なんて楽しいヒルクライムなのだろう。重鎮3人があれこれ笑いながらのんびり行く。

本日も通行止めの案内が現れる。道はしだいに舗装路が途切れ、ダートへと変わっていく。

まだまだ朝も早い。緊張感もなく、なかなかペースが上がらない。
 


しかし、先頭集団はどこまで行ってしまったのか? 少しぐらい待とうという気がないのだろうか?

いくら何でも離れすぎている。どうなってるんだ? と思っていたら、ようやく一人がその先で待っていてくれた。


どうやら、登りが苦手で不安があるメンバーは、少しでも先行して余裕を持ちたいらしい。

遅れては迷惑がかかると、峠までは先行しようという考えのようだ。
 


後続3人もいよいよ真剣に登り始める。

しばらくして、ようやく第2グループに追いついた。


姿が見えなくなって約1時間経過している。

全員ここまでトラブルなく順調に登ってきているようだ。
 


人数も増え、乗ったり、押したりと、またにぎやかに登っていく。
 


「帝釈山登山口 車で約20分」の案内が現れた。

先ほどの案内から15分減ったが、すでに75分経過している。やはり、車の5倍のペースということだ。
 


いよいよ登りもきつくなり、パワフルな数名以外はほとんど押しの状態が続く。


浮石が多く、グリップが効かない。思った通りのラインを通過できない。ハンドルがとられる。そして降りる。

ダートの上を歩くより、落ち葉の上を歩いたほうが歩きやすい。それだけ、歩きにくい勾配のダートだ。
 


フロントのガードに枯れ草が詰まったり、フリーに枝木をを巻き込んだり、

サドルバッグのベルトが切れたりと、いろいろだ。
 


林道に敷
れた「水切りゴム板」。

雨水による土砂流出被害を軽減するためのものだが、疲れた体には、これを乗り越えるのも一苦労になってくる。
 


標高1560m付近、とうとう積雪が現れた。これには少々驚いた。

この標高で雪があるのか・・・峠付近はどうなっているのだろうか・・・


汗をかいた体に、積雪の冷気が心地いい。高度計に助けられながら、最後の登りに苦労する。

景色は、晩秋からすっかり初冬の雰囲気だ。
 


時折見かける、黒い塊は熊の糞にちがいない。やっぱりいるんだ熊が・・・熊鈴は必携です。

まあ、10人で賑やかに登っていけば、さすがに熊も怖がるでしょう。

11:45  長かった登りもとうとう終わり。最後は乗車したかったが、残念ながら押してゴール。
 


峠はかなり広いスペースの駐車場となっていて、トイレも整備されている。積雪もほとんどない。

通行止めだから、当然今日の峠は我々の独占貸し切り。


さあ始まりました。我がクラブ恒例のクッキングタイム!

今回は、具材長の号令のもと、かなり具材を持ってきた人が多いです。
 


やっぱりこの季節、グツグツお鍋で煮ながら、おにぎりをいただくのが最高に幸せです。

卵スープにおにぎりを投入した「たますー雑炊」は定番ですね。どんなおにぎりでもハズレなし。


そこにさらにさまざまな具材を投入した、もう意味不明の雑炊。

ネギ、ちくわ、カニカマ、なると、ほうれん草、そしてきざみのり・・・


棒ラーメンも具材豊富で何ラーメンだかわからなくなった。でも、うまいんだな、これが。

ネギのシャキシャキ感がやっぱり最高だ。きざみのりの風味もなかなか。次回もこれで決まりだな。


標高は1780mもあるが、風もなく、日当たりもいいので寒くない。

最後に食後のコーヒーを味わって大満足のランチタイムも終了。
 


12:35 同行のYK氏が先に下り始める。今回、ひとり別行動で湯ノ花温泉に車が置いてある。

今日はこれから田代山峠を越えて温泉まで戻らなければならない。


昨夜から徹夜の強行軍だけに、時間的にも体力的にも心配だ。

健脚のYJ氏が、崩落個所まで同行するため後を追う。


時刻は13:00になろうとしている。あまりゆっくりはしていられない。

本日の 後半は、峠からの下りにどれだけ時間がかかるのか、そして土呂部峠への登り返しがどれほどなのかが気になる。


10年前の苦い経験から、JOS落下対策も万全。

峠直下は雪も残っていて、路面もかなり荒れている。
 


両足をトウクリップに入れて走ることは危険で、片足がいつでも着けるような態勢で下る。

それでも大きな窪みや、落石、深い砂利に阻まれてまともに走ることができない。

乗ったほうがいいのか、歩いたほうがいいのか悩むところだ。


いやぁ、凄い荒れ方だ。

ブレーキングで手が疲れるし、変な態勢での乗車で全身に負担がかかる。


太いタイヤにフラットハンドルのMTBだったら、もっと豪快に、簡単に、楽しく下ることができそうだが・・・

ランドナー程度のタイヤでは、下るだけでも精一杯・・・メカトラブルが起きないことを願うだけだ。
 


本人は一生懸命下っているつもりなのだけれど、実際いくらも下っていない。

疲れて止まって高度計見ると驚くばかり。 「え〜、まだこんだけしか下ってないの?」


この荒れた道を、10年前は真っ暗な中登ってきたのか・・・なんということか・・・ありえない。
 


下るにつれ、さらに様々な障害が待ち受ける。

自転車なら難なく通過できるが、車は不可能、オフロードバイクでも一人では厳しいかもしれない。
 


担いだり、持ち上げたり、転倒したり、ホイールに枝木を巻き込んだりと散々だ。

落ち葉に埋もれた枝にハンドルを持っていかれたり、行きたくない方向に行かざるをえなかったり・・・

大けがをしなかったのが幸いだったが、しだいに体もボロボロ状態に・・・疲れた。
 


そして、本日最大の崩落個所がとうとう目の前に現れた。

昨日から、いろんな障害を見てきたが、目の前に飛び込んできたこの崩落はさすがに迫力満点であった。


気持ちよく下ってきたら、いきなり目の前を岩山で塞がれた。

山の斜面が大きく崩れ、壁のように立ちふさがっている。


すでに峠から先行したYK氏、YJ氏の姿はない。無事に越えたということだろう。
 


足場を確認してから、自転車を担いで岩山を登っていく。

一歩一歩体を保持しながら、慎重に登っていく。一気に踏み込むと、ガラガラと岩が崩れるので危険だ。


担いで一気に越えたいところだが、後ろのメンバーはしだいに足場が悪くなるので、ここは安全のためにフロントバッグを外す。

自転車単体で越えれば、バランスも良く楽に越えられる。戻ってフロントバッグを運んでも大した時間はかからない。
 


その後も倒木や、小さな崩落個所が現れるが、先ほどの崩落に比べたら難なく通り抜けられる。

まあ、よくもまあこれだけ荒れたものだ。台風の破壊力はすさまじいの一言だ。
 


途中で、K氏が貴重なモンベルの熊鈴を落下。すぐに気が付いて周囲を探したところ、簡単に発見できて大喜び。

その後、もう一度熊鈴を落下して、今度は下ってきた林道を登り返して探す執念・・・すごい。


他のメンバーがすぐそばで熊鈴を発見。

おいおい、どこまで探しに登っちゃたんだよ・・・おーいあったよ〜 と山に向かって大声で叫ぶが聞こえないみたい。

しかたない、先に行こう。この人なら、そのうち諦めてすぐに追いつくでしょう。
 


15:38 ついにこの荒れたダートを下り切り舗装路に合流した。

峠を下り始めて、ここまでの標高差753mを2時間40分かかったことになる。

各30分ごとの下りのペースを整理してみた。

最初の30分はまずまずのペースだったが、その後はほとんどガレ場で速度も出ない。38

12:58 → 13:30 252m降下
13:30 → 14:00 150m降下
14:00 → 14:30 160m降下
14:30 → 15:00   58m降下(最大の崩落個所あり)
15:00 → 15:38 133m降下

時間に余裕がなくなってきた。予定より30分以上遅い。あまりにも、この下りに時間がかかり過ぎた。

次第にメンバー全員に緊張感が広がり始めた。
 


さて、休む間もなく土呂部峠へ向かう。完全舗装ということが唯一の救いだ。

こんな巨大な倒木もあったが、土呂部峠への登りはスルスルと、意外と楽に登りきることができた。


16:18 土呂部峠着。わずかだが時間の余裕を取り戻す。標高差218mを30分で登った。なかなかいいペースだった。 

先行したYK氏の姿も、同行したYJ氏の姿もここにはない。
 


YK氏はここの分岐を田代山峠へ向かい、湯ノ花温泉を目指していることだろう。

それにしてもYJ氏はいったいどこにいるのか? かなり先行してしまってすっかり一人旅の雰囲気だ。


と、そこにTN氏の携帯にYJ氏からメールが・・・パンクの連続で修理できず困っているらしい・・・なに? 歩いている?

こちらも時間に追われて忙しく、そのうち追いつくだろうという判断。携帯もまともにつながらず、問題多発。


防寒対策をして下り始める。すでに周囲は暗くなり始め、すぐにライトの出番となりそうだ。

駅までは25km。下り基調とは言え、1時間少々かかるとすると、輪行組はギリギリの時間だ。


「山を甘く見ないで!」 はい、スミマセン、ってつい謝りたくなるような看板。確かにその通りです。

下り始めて、あっという間に日が落ちた。

YG氏のLEDライトが異常に明るい。すごい、帰ったら絶対に買おう、と心に決める。
 


17時で完全に真っ暗になった。とりあえず湯西川温泉までノンストップで全員で走り抜ける。

余裕はない。誰かトラブルを起こしたら、帰りの列車に間に合いそうもない。


年々老化で視力も衰えてきているので、ナイトランも危険がいっぱいだ。

こんな峠道では、とにかく明るいライトは路面をしっかり照らしてくれるので心強い。


湯西川温泉で、帰りの宴会用グッズを仕入れる。時間がなくたって、こういうことだけはしっかりしている。

王滝キングK氏のリュックに重たいお酒をしこたま放り込んでラストラン。ありがたい、ありがたい・・・


駅までの道のりは遠かった。

トンネル続きの国道は、快適なダウンヒルではなく、ゆるく登ったり、
真っ暗な中を大きく道はカーブしたりとスリル満点だ。


トンネルの中で、隊長が何やら一人でしゃべっている・・・どうした・・・いよいよ、か?

と思ったら、Bluetoothのヘッドセットで、サポート隊と会話している。


どうやら、パンクで困っているYJ氏の回収連絡に忙しいようだ。

すげーな、隊長。走りながらそんなことできるんですか!
 

先行する隊長のテールライトを頼りに、闇夜のナイトランが続く。
 


17:50 湯西川温泉駅に到着。列車到着まで40分。休む間もなく輪行だ。

先頭グループ、サポート隊、YJ氏もすでに到着している。

湯ノ花温泉に向かったYK氏の状況だけが不明だ。この暗い中をまだ走っているに違いない。本当に心配だ。


なんとか15分前に輪行終了。ここでカーサイ組とはお別れだ。

サポート隊のおかげで、全員無事にゴールすることができた。本当にお世話になりました。


輪行千葉組の3名は、YJ氏の車に輪行袋を預けて、「手ぶらで輪行」という贅沢。

フロントバッグ一つで帰れるのだから楽ですよね〜いいなぁ
 


昨年に続き、再び同じ列車の同じ席に座る。自転車も3台なので余裕のスペース。

6名並んで、楽しい楽しい反省会の始まり、始まり。


あれだけ楽しい二日間の最後に、これまた最高の宴会列車が待っているのだからもう言うことなし。

今回は2時間少々の宴会時間と、昨年より短め。
 


窓に並んだ本日のお飲み物の数々。誰がこんなに飲むの? っていつも思うけれど、結局なくなっちゃう。

いつものように、ここぞとばかりに、二日間持ってきたおつまみを披露。

最後は何もかも飲み干し、食べつくして解散となりました。
 


天気に恵まれ、景色に圧倒され、峠越えに魅了された二日間。

担ぎも、ナイトランも、お鍋も楽しんだ。

宿の料理は満点、お湯も満点、何もかも素晴らしすぎる、フルコースの晩秋ツーリングでした。


心も体も満腹。

疲労回復と、日頃の生活に戻るのに3日のリハビリが必要でした。

参加された皆様、本当にいい旅をありがとうございました。


(その後、先行したYK氏も19時に宿に到着したと連絡が入った)
 


距離: 57.9 km
所要時間: 10 時間 52 分 13 秒
平均速度: 毎時 5.3 km
最小標高: 597 m
最大標高: 1791 m
累積標高(登り): 1865 m
累積標高(下り): 2210 m

(2018/11/4 走行)


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