昨夜は温泉に入って、美味しい食事をいただいてそのまま車中泊。

やっぱり車があると何でもできる。何もかもが自由だ。


翌朝、岡谷駅へ移動する。さて、今日から一泊二日の輪行旅の始まりだ。

カーサイ＋輪行が最強の組み合わせだと思っている。

好きな時に旅立てて、好きな所に泊まれる。そして輪行を組み合わせれば無限に可能性が広がる。

しかし昨晩から大荒れの天気になった。激しい雨音で熟睡もできず、不安な朝を迎えた。

朝一番、安曇野のポリーへ向かう仲間からの電話で起こされた。

合流しませんかとのお誘いだったが、こちらも今後の予定があるのでお断りする。


こんな天候で、仲間ともお互いに冴えない朝だったが、準備を整えて走り出す。

激しい雨は通り過ぎたが、今日は一日シトシトと降られそうだ。

こんな空模様では気分も冴えない。それでも予定が決まっているので走るしかない。

雨対策でサドルカバーをつけ、グローブも最強の「ゴム手袋」に交換だ。

農作業で使うこのゴム手袋が何と言っても防水性抜群だ。

柔らかい素材なので、ハンドル周りの操作性もよく、寒く無ければ一番役に立つ防水グローブだ。

今日のコースは単純明快だ。ただひたすら天竜川に沿って南下し、飯田市の砂払温泉まで走る予定だ。

川沿いの道をボーとしながら走るのが好きだ。


時間に追われず、道に迷わず、辛い登りもなく、遠くの景色を眺めながらマイペースで走る。

寄り道したくなったら適当に曲がる。好きなところで昼飯を食べ、コーヒーをいただく。

ソロでなければ絶対に出来ない、これが本当のポタリングではないかと思う。


天竜川とJR線に沿った道は、街中を抜け刻々と変化していく。

土手沿いに出れば、完全に自転車専用道のようだ。

綺麗な舗装とフラットな路面は、まったく抵抗がないぐらい気持ちよく転がっていく。

緩い下り基調の勾配が続くので、この雨さえ降っていなければ最高に気持ちのいい道だろう。


しかし雨宿りする場所がどこにもない。一息つける所がどこを探してもない。

走り始めて1時間半。ようやく見つけたのが高速道路の橋桁の下だ。

やっとここで雨から解放されて雨具を脱げる。小雨とはいえ、ずっと降られ続けるのは気分が悪い。

一度休憩してしまうと走り出すのがとにかく億劫になる。

ゴアテックスとはいえ、濡れた雨具の袖に手を通すのはとにかく不快だ。

しかし今日は全行程80ｋｍ以上の長丁場だ。あまりのんびりもしていられない。


どこか雨をしのげて、ランチタイムを楽しめる場所はないかと探しながら先を行く。

スタートして約20km、「みのわ天竜公園」という絶好の場所を見つけた。


川沿いの公園で、椅子、テーブルが用意された綺麗な公園だ。

椅子もテーブルも雨で濡れてしまっているが、なかなかこれ以上の条件は揃わないだろうと、ここに決定。

さすがに雨に降られ続けて体も冷えている。天竜川の流れを見ながら、温かい鍋をつつく。

天気は相変わらず冴えないが、この川沿いの道はどこまでも続く。

人も車もまったく通らず、はっきり言って今日は自分のためだけの道のようだ。

いったいこの道はどこまでこうして走っていけるのだろうか、と不思議になるぐらい終わりがない。

土手の左側は畑が広がり、川の対岸には工場がいくつも立ち並んでいる。

こんな景色がしばらく続く。徐々に距離感覚が麻痺してくるほど、単純で同じような景色が続く。

相変わらず一息つける場所がまったくない。

どこかで腰を降ろしたいが、土手に自転車を倒すぐらいしか手がない。


シトシト雨もようやくあがったが、手足の蒸れは相当だ。

特に靴の中はもう濡れまくっている。一刻も早くニッカホースを脱ぎ捨てたいぐらいだ。

延々走って、ようやくゴールに近づいてきた。残り距離を確認しながら変わらぬ景色の中を行く。

よく走った83ｋｍ。ほぼ予定通りに宿に着くことができた。

部屋に入ってさっそく祝杯だ。やはりこれだけ走れば喉もカラカラだ。


そして何もかも脱ぎ捨てて乾燥大会だ。果たして明日までにちゃんと乾くのだろうか？

足もふやけて気持ち悪いほどだ。早く風呂に入ってさっぱりしたい。

本日の宿は何組か泊り客がいるが、静かでゆっくりできるいい宿だ。

食事も豪華だったし、対応も丁寧で気に入った。


そして何よりも明日の天気が良さそうなので、もう気分はすっかりご機嫌だ。

よく走り、よく降られた一日だったけれど、これもまたいい思い出となった。