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大塩沢林道 〜五十里と塩原を結ぶ古い林道〜

もし以下のサイトがあと1年早く公開されていたら、きっと今回の計画は中止になっていただろう。

この方(”ヨッキれん”さん)が実走した1年後、我々はこの林道に挑んだわけだが、全くなすすべもなかった。


これほど詳細なレポートはまず他にないだろう。とにかく林道の全線に渡って完璧に報告されている。

単独で挑んだこの報告は、とにかく驚愕の一言に尽きる。

技術、体力、判断力、リスク管理、そして勇気・・・すべてが揃った結果がこのレポートに書かれている。
 

探索日 2009.7.31  公開日 2011.9. 9

http://yamaiga.com/road/oosiozawa/main.html
http://yamaiga.com/road/oosiozawa/main2.html
http://yamaiga.com/road/oosiozawa/main3.html
http://yamaiga.com/road/oosiozawa/main4.html
http://yamaiga.com/road/oosiozawa/main5.html
http://yamaiga.com/road/oosiozawa/main6.html
http://yamaiga.com/road/oosiozawa/main7.html

とにかくスタートからゴールまで、これほど詳細なレポートは見たことがない。

貴重な報告として、ぜひ一読するべきだろう。

(写真はホームページよりお借りしました)



前日の宿、元湯から峠を越えて五十里湖へ抜けるルートは、地図にしっかり実線で存在している。

プロフィールマップを作ってみれば、適度な峠越えと、下り基調の林道を楽しめる魅力的なコースだ。

五十里湖へ出られれば、後は帰りの時間に合わせて周辺の散策ができる。



標高差、距離からも難所を思わせるような所はなさそうに想像できる。

しかし林道はかなり荒廃しているようで、多少苦労することになるかもと思いつつ宿を出発した。

だが実際は、想像を遥かに越える超一級の「廃道」となっていた。


2010年11月14日(日)


まったく昨日はいろんなトラブルに見舞われて、皆さんどうしようもないね・・・

なんて人のことを笑っていたら、今度は自分の番になった。


日頃の点検不足、メンテ不足、ほったらかしの罰がこの朝やってきた。

昨日の荒れた林道走行で、長年使ったユッチンソンが「崩壊」寸前になっている。

前回のツーリングでは何ともなかったのに、一気にこんなになってしまった・・・これで走れるのだろうか?


お決まりの早朝品評会。出発前はこれだから時間がかかる。というか、これが楽しいんですけどね。

余裕でのんびりしていたら10時近くになってしまった。まあ距離も短いし、なんとかなるでしょう・・・


別部隊2名の秘密兵器。こんな軽量マシンで一緒に走られたんじゃかないません。反則です。

そしてペガサスきらきらマシーン。なんたって輝いてます。お見事です。


本隊9名で記念撮影。

別部隊2名とはここでお別れです。昨夜一緒に飲んだだけでした。(一緒に走りたかったなぁ)


ソールの剥がれた靴は、さらにガムテープで補強して完璧の出来栄え。これなら問題なさそう。

まずは宿から登り返して元湯林道の入口に向かう。


すぐに林道の分岐が現れる。林道入口の脇に「この先行き止まり」の標識が建っている。

そんなことは気にもせず、そして疑問にも思わず林道に入っていく。


雰囲気のいい林道だ。道幅も広く、すぐに落葉に埋もれたダートへと変わった。

そしてその先に通行止めのゲートと、錆びた「元湯林道」の標識が現れた。


林道にしては道幅が結構ある。車でも十分走れる広さだ。

時々目にする標識やカーブミラーは、かつて交通量があった事を意味するものだ。

しかし、もはやこの林道を走る車など存在しない。おかげで広々とした林道を楽しめる。


厳しい登りになってきた。落葉に埋もれた林道は路面が見えないほどだ。

乗ったり押したり、GPSの画面に助けられながら標高を稼いでいく。

朽ちかけた小屋(営林小屋)が現れる。峠まではあと60m程、もうひと頑張りだ。


ゲートから約30分、標高1046mの「峠」に到着した。(地図上にも峠名はない)

メンバー9名のうち2名はここでお別れ。別ルートで帰るためこの先は同行できない。

本隊はこの先、ひょっとしたらすぐに戻ってくる可能性がある
ため、携帯の電話番号を 確認しておく。


2名にはしばらく峠で休憩していてください、と告げていよいよ大塩沢林道を下り始める。

周囲はすっかり秋景色。そろそろ晩秋の気配が漂い始めている。

峠から先は、すでに道が見えないほどの落葉、枝木、岩、倒木などで荒れている。


乗車することはほとんど不可能だ。落葉を踏みしめながら、足元の安全を確認しながら下っていく。

あまりにふわふわの落葉が心地よく、行く手は不安だらけだが、この音と色を楽しんでいる。


人数が多くてよかった。この下りを一人で下るのはかなり不安だ。

それでも、まだまだこの辺りはしっかり道筋もわかるし、安定した道のりだった。


しかしその後、すぐに林道は崩壊の様相を呈してきた。

倒木が道を塞ぎ、遥か昔に朽ち果てたと思われる大木が転がっている。

崩れた斜面が行く手を塞ぎ、いよいよ障害物の連続となってきた。


それでもこれまでの経験からしたら、ちょっと荒れた林道と同じで、これなら行けそうだと感じていた・・・

が、しかし・・・いきなり目の前にとんでもない規模の崩落が現れた。


一瞬にして道が消え、目の前にはご覧の通りの崩れた斜面が立ちふさがっている。

こりゃダメだ、と直感した。しかし何度もこうした経験がある面々、まずは空身でルートを探る。


この二人をもってしてもルートを開拓できないほどの崩落だ。

どうすることもできず、悩むこともなくすぐに撤退の判断となった。


峠に残した2名に”今から戻るから待っていてくれ”と連絡する。

11:30 崩落個所は、峠から下って20分の辺りだ。まだ下って間もない地点で救われた。


実は、最初に紹介したサイトのレポートによれば、ここが峠直前の最大の崩落となっている。

レポートではルートが逆だったので、ここを突破できれば峠に出られる、という最後の関門だった。

下から延々崩落個所を突破してきたならば、何としてでもこの崩落も越えたかったに違いない。


我々はこの崩落のおかげで、その後の地獄を知らずに済んだと思えば、運がいいとしか思えない。

当時はこの先の状況も全く分かっていなかったから、ここを越えられたらさらに先に進んでいただろう。

もし、この崩落がもう少し規模が小さくて突破していたら、後戻りできず深い深い地獄に落ちていった事だろう。


撤退は標高差50mほどだったので助かった。

それでも荒れた林道で、枝木を挟んでステーを曲げたりとトラブルも発生。


峠を下り始めて1時間後に、再び峠に戻ってきた。

待機していた2名はすっかり体も冷えてしまったようで、我々とはずいぶん温度差が違う。

やっぱり一緒に行きましょうよ、ということで再び全員で来た道を戻ることになった。


下りとなれば一気に世界が逆転する。落葉の絨毯が楽しいダウンヒルを演出してくれる。


ついさっきの荒廃した景色からは、考えられないほど快適な林道のダウンヒルだ。


乗車できる喜び。スピードを出せる喜び。

腰を浮かせ、枝をよけ、石をよける。路面に集中し、一瞬たりとも脇見も、景色も見れない。


崩壊した林道同様、自分のユッチンソンも崩壊寸前なのであまり豪快なダウンヒルはできない。

いつもより控えめに、タイヤサイドをいたわる様にゆっくりと下る。


結局振り出しに戻ってきた。いったい何だったのか・・・という結果だが、これが正しい判断であっただろう。

予定していたコースが行けないとなると、大きくコースを変更せざるをえない。


こうなればもう無理はできず、尾頭トンネルを越えて五十里湖へ出るしかない。

舗装路になればもう安心だ。下るにつれ、素晴らしい紅葉が我々を待っていてくれた。


荒廃林道にすっかり時間をとられ、気が付けばもう13時。

国道に出て見つけたのが「峠の茶屋」。ちょうどいい所に最高の休憩ポイントがあった。


ここで塩原方面へ下る2名とは本当のお別れ。我々はここでたっぷりうまいもの三昧。

いきなり団体さんがやってきて、あれこれ注文するもんだからお店の人大忙しでした。


通りたくなかった、全長1782mの尾頭トンネル。テールライトを点けてトンネルに飛び込む。

激しい交通量、狭い路肩、轟音、排気ガス、オレンジ色の照明・・・早く出たい一心でペダルを漕ぐ。

長いトンネルだった。出口が見えてもなかなかゴールが近づかない。そしてやっとの思いでトンネルを抜けきった。


いよいよこの旅もフィナーレに近づいてきた。

五十里湖まで下ってくると、大塩沢林道への”立派”な分岐が現れた。

”この先通行止め”の標識と、”
山を甘く見ないで 行方不明・滑落事故多発”の大きな看板が設置されている。


「ここに出てくる予定だったんだよなぁ・・・」と残念そうに皆で眺める。(絶対無理でした)

ついつい行きたくなる雰囲気の林道入口。ちょっと様子を見に、偵察に出かけたメンバーもいた。


15:00 湯西川温泉駅でゴールとなった。すでにいい時間になっている。

ここから東京方面へ帰るにはかなりの時間がかかる。走行距離は32kmほどだが、これでちょうどよかった。

駅前で皆で輪行大会だ。各自色々な輪行方法で実に面白い。輪行袋の大きさも形もバラエティに富んでいる。


後は延々と楽しい楽しい宴会列車だ。お酒が足らなくなるほど、ゆっくりと列車旅を楽しめる。

無事に走り終えた帰りは、こうした列車が一番いい。

車窓からの眺めが刻々と変わり、次第に暗くなっていく。東京に着くころにはすっかり上機嫌だ。


今回は撤退という残念な結果に終わったが、判断は間違っていなかった。

また再挑戦すべき林道になってしまったが、あの状況ではもう完全に廃道となるだろう。



 
距離: 32.4 km
所要時間: 5 時間 20 分 00 秒
平均速度: 毎時 6.1 km
最小標高:  589 m
最大標高: 1046 m
累積標高(登り):  577 m
累積標高(下り):  758 m

(2010/11/14 走行)


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