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プロローグ 「利尻・礼文への憧れ」


1977年8月、大学生の時に北海道ソロキャンピングに出かけた。

約1ケ月の長旅、旅もそろそろ終盤に差し掛かった頃、軽装になって稚内から利尻・礼文へ渡った。


時間もお金もかかる離島にわざわざ行くつもりはなかったが、ここまで来たなら最果ての島へ渡りたくなった。

東京からあまりに遠く、きっともうここへ来ることは二度とないかもしれないと思うと渡ってみたくなった。


お金がないので、わざわざ輪行して乗船したら、そこにはとんでもない日本一周サイクリストがいた。

1泊2日の忙しい離島旅だったが、とにかく全てが感動に包まれた島だった。


知り合った他のサイクリストや、YHで一緒になった観光客と一緒に島を巡って走った。

今でも深く心に刻まれたこの利尻・礼文に、28年経った今、もう一回行ってみたくなった。


金はなかったが時間はいくらでもあった学生時代と違って、社会人にはこんなロングツーリングは不可能だ。

果たして利尻・礼文に行くにはどうしたらいいのだろうか?


飛行機で行って、2泊3日程度で帰ってきたのでは、島の良さは絶対にわからない。

やはり最低でもそれぞれの島に数泊滞在したい。そうなると、どう考えても最低1週間以上の休暇が必要だ。


プランニングには何ケ月もかかった。

憧れの地へ再び行くために、ありとあらゆるプランを練った。


そしてその年の始めに、有給休暇の予定を職場に宣言した。「今年の夏は、ここからここまでずっと休みます」と。

土日を含めて平日をすべて休むと9連休。さらに金曜日の夜からスタートするプランを練り上げた。


2005年8月26日(金)

大洗港 〜 フェリー


23:30 大洗港発 苫小牧行きフェリー ”さんふらわあ みと”

仕事を終え、帰宅後一息ついて大洗港を目指して首都高に乗る。


いつもの、毎日同じことが繰り返される週末とはまったく違う金曜日の夜。

これから始まる長旅に、すでに会社人間から旅人へと心は変わっている。


流れる都会の夜景が、今日はやけに心地いい。

深夜の大洗港に到着する。こんな時間に港に来ることはまずない。


不思議な世界だ。巨大なフェリーが多くの車を呑み込もうと口を開けている。

さあ、いよいよ乗船だ。この先は北海道が待っている。


さっそく自分の寝場所で飲みだす。車があるからとにかく装備が贅沢だ。

今回の旅の最大の特徴は、利尻・礼文まで車を持ち込むという”あきれた”プランだ。

常に自分の傍らに車があれば、どんな旅でも演出できる。そして寝場所も自由になる。


島の自然を肌で感じ、朝から晩までこの目で見るにはキャンプしかない。

だから無理してカーサイキャンピングの形を考えた。これなら、どうにでもなる。


夏休みのシーズンも終盤、苫小牧行きのフェリーも空いている。

こうしてついに憧れの利尻・礼文再訪の旅が始まった。


長距離フェリーは、1975年、九州・沖縄キャンピングの帰りに、那覇から東京まで乗ったのが最初だ。

あまりの長時間の船旅に時間を持て余した船旅だったが、何とも言えぬ旅情に引き込まれた。


また長距離フェリーに乗ってみたい。あのじれったいほどの時間を過ごしてみたくなった。

今回、北海道へ渡るにはこの長距離深夜フェリーが最適だった。


2005年8月27日(土)

フェリー 〜 苫小牧港 〜 稚内


苫小牧港まで、所要時間は約20時間。目覚めて、日中の船旅を満喫して夕方苫小牧港に入港する。

GPSで現在位置を確認すると、八戸沖を航行している。

当たり前のことだが、こうして今海上にいるのだとわかるとなぜか感動する。


日中、船内ではやることは限られる。

歩き回って見学するのも飽きてくる。甲板でずっと海を見ていても何の変化もない。

やっぱり楽しいのはGPSの画面を見ることだ。いよいよ北海道が近づいてくるのが待ち遠しい。


18:02 なんとこんな素敵な夕日を船上から見ることができた。

こんな経験は初めてだ。あまりの美しさに思わず立ち尽くしてしまう。


なかなかこんな美しいシーンには巡り合えない。歓喜の声があっちからも、こっちからも聞こえてくる。

水平線に沈んでいく夕日はあっという間だった。しっかりとカメラに収め、しばらくは余韻に浸っていた。


いよいよ苫小牧港に入港する。夜の港は実にきれいだ。

暗闇に光る白やオレンジの無数のライト。フェリーターミナルに輝く苫小牧港の文字。


やっぱり船旅は、出港から入港まで全てがドラマチックだ。すでにこの時点で旅情に満ち溢れている。

先を急ぐ乗客が出口に集まってくる。たっぷり時間のある自分は最後まで接岸の様子を眺めていた。


19:30 こうして長かった船旅も無事に終わり、やっと北海道に上陸した。

といっても、利尻・礼文までの道のりのまだ半分だ。


ここから稚内まで、今度は長距離ドライブが待っている。

苫小牧港から稚内港まで約400km。この時間から走って、いったい何時に着くことが出来るのだろう。


翌日11:30の利尻島行きフェリーに乗るためには、今夜は稚内港で車中泊するのがベストだ。

何としても、頑張って稚内港まで車を走らせようと先を急ぐ。


とはいえ、非力な車ではせいぜい90km走行が限界だ。まあ安全運転で行くしかない。

もちろん渋滞など一切ないのでドライブは快適だ。景色は見えないけれど、音楽を流しながら快適なドライブ。


 

走り始めて、はたしてガソリンはもつのか・・・と心配になってきた。

油断していたのだが、結構燃費が悪い。燃料計がしだいに減っていく・・・

アクセルを戻さざるをえない。
カーナビにガソリンスタンドのマークが全く見つからない。

大きな道路、町のあるところ、交通量の多い所・・・
だめだ、まったく人の気配も町の明かりもない。

あぁ、なんてこった。こんなところでガス欠で止まってしまうのか? 


どこまで行けばガソリンスタンドがあるんだ? 
10km、20km、30km走っても一軒もない・・・

もう燃料計は0を指している。時刻はもう23時。
こんな時間にやっている店もないだろう・・・

40km、50km・・・まだ走れる。
0になってから20kmは走っている。

そして・・・ついに・・・豊富の町の中で、こんな時間に
営業している小さなガソリンスタンドを見つけた!

助かった。ホントにほっとした。そして、こんな時間まで
営業していることに、ただただ感謝しかなかった。


話をすれば、この辺りは全くガソリンスタンドがないらしい。
なのでこんな時間まで営業しているそうだ。

もう、日付が変わりそうな時間だった。
稚内港に着いたのは深夜1:30

適当な所に車を止めて、すぐに車中泊の準備・・・
と言ってもそんな簡単に眠れない。

興奮した脳を休めるには、やっぱり一杯飲まざるをえない。
こうして、あとは夜明けを待つばかりとなった。


2005年8月28日(日)AM

稚内港 〜 利尻島(鴛泊港)


目覚めれば辺りは雨上がりだ。ここまでの道のりはとにかくハードだった。

これだけ時間をかけても、まだ目的地に着かない。やっぱり利尻・礼文は最果ての島だ。


ついに最後のフェリーに乗船した。車を島へ持ち込むにはかなりお金がかかる。

普通、マイカーを2島へ持ちこむ人はいないだろう。持って行ってもあまり意味がない。

しかし自分には、車がなければこのツーリングを満喫できない理由があった。


いよいよ稚内港の岸壁を離れる。

旅人の終着場所、北の果て防波堤ドームを眺めながら利尻島へ向かう。


もう大丈夫だ。このフェリーに乗れれば、あの懐かしい利尻島へ行ける。

白い波しぶきの先、深い雲の隙間から利尻島の姿が見え始めた。天気は今一つ。利尻岳も見えない。


GPSの画面に、徐々に近づく利尻島が近づいてくる。

自宅を出発して約40時間。約2日かかってやってきた。そして28年ぶりの鴛泊港に入港した。

とにかくここまでくるだけで大変だった。これだけで一つの旅が語れる感じだった。




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