峠への招待 > ツーリングフォトガイド >  ’2004 >  獅子目峠・矢鱈坂


獅子目峠:和歌山県西牟婁郡すさみ町。紀勢本線江住駅の北北西7km。紀伊半島南部で、熊野灘を望む。古座街道が通じる。(標高370m)
コカシ峠:和歌山県西牟婁郡すさみ町。紀勢本線江住駅の北4km。県道36号が越える。(標高330m)
矢鱈坂:和歌山県串本町(標高166m



熊野古道を巡るツーリングも終盤になってきた。

伊勢路、中辺路、紀伊路と左回りに紀伊半島を走ってきた。

最後の二日間は、大辺路周辺の峠越えを輪行で楽しもうと考えた。

熊野古道本来の道を辿るなら、今回の峠越えルートは大辺路からはずれているが、時には熊野古道にこだわらない一日があってもいい。

そこが今回の紀伊半島の自由旅のいいところだ。

前夜は、白浜海岸近くに車中泊し、午前中は移動を兼ねて観光地をドライブしてきた。

周参見の海水浴場駐車場から走り始めたのは、もう昼を回っており、まずは駅前の定食屋で腹ごしらえ。

 

 


この周辺はすさみ八景と称して、見所が点在している。
このルートでは、そのうちのひとつ、雫の滝を目指すことになる。

今日の予定は、峠越えをして輪行で戻ってくるというプランだ。
ロングツーリングになると、毎日が周回コースでは物足らなくなる。

時には一泊を交えたり、輪行を楽しむというバリエーションがほしくなる。

前半は周参見川に沿って、雫の滝までのんびりと走る。
のどかな山村風景が続く田舎道だ。

交通量の少ない綺麗な舗装路をポタリング気分で走り始める。
すぐに滝の入口が現れる。せっかくだから、自転車を置いて滝を見物しに行く。

どんな滝かと期待して降りていくと、綺麗な二段滝が目の前に現れ、その爽やかさと水の美しさに 結構満足。
 

 


小河内で一服する。

自動販売機がポツリと置かれた、本当に人気の無いところだ。
ここから右へ分岐して獅子目峠への登りに入る。

獅子目峠への旧道へ入り、うっそうとした杉林の中を行く。

台風の残骸が残る路面は、荒れたままになっていて、さらに舗装の路面は通う車もなく、ぬるぬるの滑りやすい状態になっている。

静かにトルクをかけずに進んでいる分には問題ないが、足を着いたり、踏み込んだりすれば、すぐにスリップしてしまうほどだ。

かなり大きな枝が散乱していて、周囲の景観はお世辞にも快適とは言えず、何かジャングルの中を進んでいるような感じだ。

 

 


どんな峠かと期待する気持ちよりも、早く抜けてしまいたい、と思わせるほどの路面で、静かでいいのだが、ぬるぬるした感覚がとにかく精神的に良くない。

おのずとペースも早くなり、峠のピークを迎える。

峠は、このままでは廃道になってしまうのではないかというぐらい寂しい所で、路面は舗装されていはいるものの、まず誰も通らないだろうと思われる。

峠を示すものは何もなく、ただ舗装路を 覆い尽くしてしまうほどの枝木が散らかっていた。

こんな路面だから、下りは恐ろしいの一言だ。
まっすぐにしか走れず、ほんのわずかなコーナーを曲がるにも苦労する始末だ。

なんでこんなにぬるぬるしているのか、全く信じられない路面状況だった。

 

 


ようやく抜けきり、下防己(しもつづら)という村に合流した。

滑りやすい路面とは打って変わって綺麗な舗装路が現れた。

ダウンヒルを楽しむというより、何かに出くわさなくて本当に良かった、と感じるほど不気味な下りだった。

気分を入れ替えコカシ峠を目指す。

気持ちの悪い路面から解放されて、無人地帯の山村を行くと、やがてほどなくコカシ峠の分岐地点に出る。

コカシ峠には峠を示すものは何もなく、全く味気のない峠である。

奇妙な名前の峠だが、その名の由来は何なのであろう。

 

 


峠を後にし、大鎌から比曽原へ下る。

全くの無人地帯の中、ひっそりとした林道が川に沿って続く。

視界も広がらず、気持ちよくビールを飲む雰囲気ではない。

食料に手を付けられず林道を下っていく。

矢鱈坂のトンネルに出てきた。トンネルの手前に右に入る分岐がある。

旧道はここから行くことになるが、目の前に旧道のトンネルが見えない。

道はずっと登り始めている。

確か、地図上ではここから旧道トンネルに出れるはずと思いしばし立ち止まるが、周囲にそれらしきものは存在しない。  

 

 


一旦戻って、左手の盛り土の上へよじ登ってみると、その先に雑草だらけの小さなトンネルが目の前に現れた。

車両がこの峠を通過することは不可能で、自転車を持ち上げて初めて通行できることから、いまや全く使われていないトンネルである。

トンネルの距離は短く、上からは雫がたれてくる。

ここを人が通行したのはどれくらい前なのであろうか。

まず、通る必要のないトンネルであり、ハイカーでさえ通らないであろう。

唯一ここを目指すのは、峠越えを目的としたサイクリストしかいないのではないかと思われる。

それだけ、ここのトンネルは通過するだけで貴重な経験かもしれない。


 


対向車ゼロのダウンヒルで、一気に和深へ下る。

民家が現れ始めると、今日のツーリングもフィナーレに近づく。

無人の和深駅で、ようやくビールを飲めることとなった。

列車の到着までは充分時間があるため、ゆっくりとした輪行となった。

ホームからは太平洋が大きく目の前に広がり、なかなかロケーションのいい駅だ。

周参見までは短い時間だが、海岸線を左手に見ながらのローカル線は今日一日の締めくくりに最適だ。

揺れる車両と、ゴトンゴトンという心地よいサウンドに、やっぱり輪行はいいなあ、と再確認するばかりであった。

本日の温泉:イノブタ温泉 寝場所:潮岬

 

(2004/9 走行)


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