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旧御坂峠:山梨県南都留郡河口湖町/東八代郡御坂町(1525m)  新御坂峠(約1310m)
旧甲斐と駿河とを結ぶ鎌倉往還として栄えた。日本武尊がこの峠を越えたところから、この名が付けられたといわれる。
地質学的に著名な御坂層の名も、御坂山地と呼ぶ名も、この峠からとられている。
戦国時代には、この峠を中心に武田氏と北条氏との合戦が行われた。
現在この旧御坂峠はさびれ、国道137号のトンネルのある新御坂峠のほうが「富士には月見草がよく似合う」と刻まれた太宰治の文学碑とともに知られている。付近には、地蔵尊・観世音菩薩の石像や子持石などの石塚がある。
富士山の眺めにすぐれ、花水坂・西行坂とともに富士見三景と呼ばれる。             



***これほど不運に見舞われたツーリングは初めてだ***

今年の走り初めが3月になってしまった。

何をしていたのかというと、すっかりヤフーオークションにはまってしまって、連日クラシックパーツを求めて入札の日々でした。 

「こんなことではいかん。走らねば!」と、ようやく出かけたのであります。
 

初日は河口湖に車をデポし、川口湖畔から天神峠を目指したのだが、山へ分け入り、藪こぎのあげく前進できず撤退。

そして、帰り道を見失い斜面を引きずり降ろし泥だらけに。

さらに、ガードレールで脱いだ靴の泥を落とそうとした時に、片足を3m下湖畔に落下、這い上がる時にバラのトゲで太ももを負傷という、散々な出だしだった。

 


不運は重なるもので、この後これでもかという災難に見舞われた。

その夜は湖畔にて車中泊。ところが、気が付くと、なんと寝袋がない。


この季節、まだまだ夜は冷えて、いくら車内とはいえ寝袋がないと寒くて寝れたものではない。

しかたなく、あるだけの衣類を身にまとい、さらにエンジンをかけっぱなしで寝ることになった。


ところが、ガソリンがすでに半分を切っており、このまま朝まで持つのか、と不安なまま寝ることになった。

明けて翌日。天気は快晴だが、ガソリンはほとんどカラ。早朝からガソリンを求めて走り回る。

ようやく1軒見つけてホットする。さあ、気分一新、今日は 快晴の中、新旧の御坂峠を満喫しようと心が弾む。  
 


車を御坂トンネルへ移動し、いつものように準備し走り始める。

国道137号の交通量は多いが、天下茶屋へ向かうこの道はほとんど車も通らず静かなヒルクライムを楽しめる。


すぐに富士の姿が右手に見え始め、その雄大さと美しさに気分も上々。

心地よく登りつめ、新御坂峠のトンネルへ。しかし驚いたことに、トンネル入り口はゲート封鎖されている。


この先は雪のため通行止めとなっており、車もバイクも皆ここでUターンをせざるを得ない。

まあ、自転車にとってはこの程度の積雪ならたいしたことはなく、逆に予想外の雪に出会えてラッキーと大喜び。

峠からの、それは見事な富士山と河口湖を眺めながら、ビールと枝豆でご満悦。  
 


ゲートを越えトンネル内に入る。車のドライバーがうらやましそうにこちらを見ている。

トンネルを抜けると、真っ白な世界が目の前に広がった。突然の銀世界に思わず大喜び。


積雪はタイヤが埋まる程で氷結しているため、MTBで走るにちょうどいい具合だ。

久しぶりの雪道走行は楽しく、ギヤを低めにセットして、誰もいない雪道を「バリバリ」と音を立てながら下って行く。


すぐに雪道は終わり、舗装のダウンヒルへと変わる。

さあ、藤野木の分岐まで気持ちよく下ろうと、ハンドルにビデオをセットして下り始める。


ところが、気持ちよくコーナーをクリアしていると、「シュー」という嫌な音がしてきた。

見る見るうちにフロントのエアーが抜けて、ベコベコ状態になってしまった。
 


「えっ? なんで?」

別に路面が悪いわけでも、無謀な走りをしたわけでもない。


常識では考えられないところで一気にエアーが抜けてしまった。

これはよっぽどでかい穴が開いたな、と直感したが、とにかくチューブを見ないことには信じられなかった。


まあ、予備チューブもあるし、パッチもあるから何の心配も要らなかったので、余裕でビデオ撮りながら修理開始。

しかし、どこを調べても穴など開いていない。ひょっとしたらフレンチバルブ? いや問題ない。


あれれ? とよく調べるとバルブを傾けると根元の部分がパックリ口を開けている。

ありゃりゃ、これじゃしかたがない。だけど、どうしてこうなった? リムに異常はない。 
 


まあ、悩んでいてもしかたないので新しいチューブと交換して下り始める。

藤野木へ合流して、いよいよ旧御坂峠への登りへと地図を確認する。


下った先は大きなゲートで進入禁止になっている。積雪のため、こちら側も通行止めだ。

と、再びあの「シューー」という音が!


「なにー!」 「うっそー!」

今度はさすがに動揺は隠せなかった。さっき交換してから10分もたっていない。


「いったい、どないなってんねん」

再びフロントホイールをはずす。そして驚いたことにまったく同じ所が同じようにやられていた・・・  
 


参った。もう予備チューブはない。パッチで直すしかない。

しかし、場所が場所だけに果たして直るだろうか。


パッチとゴムのりを取り出すが、唖然、ゴムのりが乾燥していて使い物にならない!

ああ、もはやこれまでか、と思ったが、なんと幸運なことに、工具袋の中にゴムのりのいらないパッチが数枚隠れていた。


これでなんとかならないだろうかと、苦心惨憺、2枚重ねで補修する。エアーを入れてみると具合がいい。

しめしめ、これで走れそうだと安心したのもつかの間、やはりエアーが漏れる。


同じように別のチューブも補修するが、結果は同じであった。

この瞬間、今回のツーリングはここまでとなってしまった。

よりによって、下りきったところでこの仕打ちとは・・・全く不運としか言いようがない。

 


当然戻るしかない。

それも押して歩くしか手がない。たった今、気持ちよく下ってきた道を、延々と歩くしかない。


ショックだった。エアー漏れの原因もわからず、チューブごときで戻らざるをえないふがいなさに意気消沈。

再びトンネルまで戻ってきた。先ほどビールと枝豆でご満悦だった場所を無言で通り過ぎる。


ここから車までは結構距離がある。

すこしでも乗って下りたいと、無理をしてエアーを詰め込み、フロントに体重をかけないように下り始める。


エアーが抜ける限界まで乗り続け、タイヤが外れそうになったらまたエアーを入れる、なんてことを繰り返し、 重いハンドリングの中、やっとの思いで車に戻ってきた。

 


もう、ここまでで十分痛い目にあった。散々な一日だった。

しかし、これで済むほど甘くなかった。最後にとどめが待っていた。


帰り支度を始めた。MTBをばらし、荷物を片付ける。ふと気が付くと、車内に置いてあったバッグがない。

助手席の下、見えないように隠しておいたはず。中には免許証と、万が一のための現金が入っていた。


ない。いくら探してもない。どこにもない。

盗まれた・・・ ガーン・・・ 原爆級のショックだった・・・


施錠をし忘れたのか? こじ開けられたのか? 

初めての経験に、さすがに右往左往する。


そのまま富士吉田警察へ行き、事情説明、署名捺印、そして現場へ戻って検証、写真撮影と、もう散々な一日。

頭の中はすでに真っ白。そして、傷心のままの帰宅となった。
 


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