峠への招待 > ツーリングフォトガイド >  ’2003 >  岩蕈山



長野県北安曇郡白馬村。大糸線信濃森上駅の北西4km。(標高1290m)  白馬山の前山で、山麓は岩岳スキー場となる。



今年もゴールデンウィークの時期になった。

ここ数年、北アルプスの眺めに洗脳されていて、今年は違う所にしようとプランを練るのだが、どうしてもあの絶景が頭から離れず、結局今年もここへやってきてしまった。

MTBダウンヒルで有名な岩蕈山、ニューサイで紹介されていた権現山林道。今回はこの2つのコースを巡るプランを計画した。

絶景と、温泉と、そしてキャンプという満腹のプランニングが出来上がった。

何度も来ていると要領を得たもので、車のデポ地にも苦労せず、ゆっくりとしたスタートとなった。

どうしていつも天気に恵まれるのだろう、というばかりの快晴。写真をみてお分かりのように、雲ひとつない晴天だ。


走り始めれば、視界を占領するのはスケールの違う3000m級の北アルプス連峰だ。

やはり、毎年見ていてもこの凄さには圧倒される。まず、見事な眺め、迫力だ。

白馬大橋では、老夫婦が白馬の眺めを描いている。実際の眺めも美しいが、キャンバスの絵も見事である。

日傘を後ろからさしだす奥さんの姿がとにかく印象的であった。

そして驚くことに、5時間後再びここに戻ってきた時、まったく同じ姿の二人がそこあった。

白馬大橋の脇にはオートキャンプ場がある。とにかく周囲のスケールが広く、開放的な美しいキャンプ場だ。

今日はこのあたりでキャンプしたいと思いながら景色に見とれていた。


 

さて岩蕈山への登りに向かう。

一度国道まで下り、岩岳スキー場を目指す。

すでにシーズン終了のため、スキー場は人影がほとんどない。しかし、やはりいましたMTBチーム。

広い駐車場でMTBのセッティングをしている。本格的な装備から、もちろんダウンヒル野郎に違いない。

同じMTBとは言え、こちらはビールにつまみまで満載だから機動性がまるで違う。

そんな彼らの脇を過ぎ、西山ゲレンデからトレッキングコースに従ってゲレンデを登り始める。

この晴天のもと、気温がかなり高く、日焼け止めを塗っていても肌が焼けるようだ。

まずはTV塔までが第一目標だ。荒れたダートだが、頑張れば乗っていける。

すると眼下に先ほどのMTB軍団が現れ始めた。

なんと恐ろしいことに、彼らは道なきゲレンデを直登しはじめたではありませんか! 何というパワー! 何というアホ! 


これではすぐに追いつかれると思っていたら、どうやらルートが違うらしく、どこかに消えてしまった。

TV塔では暑くてたまらずビールを一本いただいてしまった。これからの本格的な担ぎ上げの前に、エネルギーの補給である。

辛い、厳しい登りがここから始まる。

TV塔から頂上までは標高差約400m。ほとんどが押しと担ぎだ。

連続した長い階段に始まり、きつい勾配、やわらかい路面、深い落ち葉の山道に心臓も悲鳴を上げる。

ゲレンデに合流すると、周囲が開け下界が大きく見えるようになる。

スキー場というのは何も障害物がないだけに、こうした眺めは最高だ。 


勾配はかなりきついものの、周囲が広すぎるために感覚が麻痺してくる。

頂上が正面に見えてくると、もうリーチかと思うのだが、まだまだここからはたっぷりと登らなければならない。

残雪が残っており、いよいよかなり登ってきたと感じさせる。

クーラーバッグの中に雪をたっぷり放り込んで、ビールを冷やし始めた。

さらに自転車が重くなり、もう頂上直下では日陰もなくヘロヘロ状態に。

そして、ようやく誰もいない岩蕈山の頂上に押し上げた。

そんな苦労も、この頂上からの景色を目の前にしたら、すべて忘れてしまうだろう。

「すげえ!!」 「なんだこりゃあ!!」

文章でこの感動を伝えるにはどう表現すればいいのだろう、と考えてしまうほど、この眺めは異次元の世界だ。


風もなく、穏やかな午後。誰もいないシーズンオフの山頂。

ベンチに座り、冷えたビールとおいしいつまみに舌鼓を打ちながら、ただただこの景色に我を忘れる。

何度見ても、いつまでいても飽きることがない。何枚も何枚も写真を撮ってしまう。

こんな絶景をただ一人で独占してしまっていいのだろうか、これは誰かに教えてあげなくてはいけないんじゃないか、なんて思ってしまう。

もう、これだけで大満足であった。

そして、このあとの豪快なダウンヒルも、倉下の湯も、松川沿いのキャンプの夜も、何もかも出来過ぎであった。

参りました、完全に。

 

 

(2003/5/5 走行)


峠への招待 > ツーリングフォトガイド >  ’2003 >  岩蕈山

inserted by FC2 system