峠への招待 > ツーリングフォトガイド >  ’2002 >  四万十


高知県幡多郡大正町・十和村・西土佐村・中村市
全長196kmの四万十川は、上流にダムがない日本最後の清流として有名。沈下橋が架かる流域は、カヌーやキャンプなどのアウトドアも楽しめる。



「日本最後の清流」と呼ばれる四万十川。

かつて、四国を訪れた時には、ほとんど見ることができなかったこの川を、いつかのんびり走ってみたいという気持ちを抱いていた。

悠々と流れるその川に沿って、何も考えず、一日かけて、ランドナーで走ったら、きっと峠越えとは違ったツーリングを味わえるのではないかと思っていた。


四国を訪れた第一の目的が、この四万十巡りだった。

昨夜の土佐大正の町では、唯一店をあけていた食堂で、店の主人と楽しい一夜をすごさせてもらった。


自転車でのツーリングと知って、色々な話に花が咲き、四万十の話、あるいは東京の話と、思い出に残る時間を過ごさせてもらった。

土佐大正駅横の駐車場で車中泊して、翌日いよいよ走り出す。
 


うねうね、くねくねと蛇行を重ねる四万十川に沿って、平坦な道を快適に走る。

車も少なく、のんびりとペダルを回す。


こうして平坦な道をゆっくりと走るツーリングというのは自分には珍しく、いつもの感覚とは時間の配分も、気持ちの持ち方も違ってくる。

四万十に沿った道は、所々でショートカットのトンネルを迎えるが、ここはあくまで川に沿って走るべきだ。


ほとんど流れのない、悠々とした四万十川は、いざ水量が増せばその姿を一変させるという。

いくつも点在する沈下橋は、決壊を防ぐために、橋の欄干がなく、のっぺりとした薄板のような形に作られている。
 


里川橋という沈下橋へ降りてみると、4WDでやってきた釣り人が一人静かに釣り糸を垂れている。

自分は釣りをやらないので、釣り人の気持ちはわからないが、この環境であれば、さぞ気分のいいことだろうと想像できる。


朽ちかけた屋敷峠のバス停を過ぎ、地図上に四手峠の存在を発見する。

やはり、峠越え好きとしては、平坦な道ばかりでは満足できない。さっそく、アタック開始。

国道から山道に入ったそのルートは、最初はいい感じで進んでいたのだが、ほとんど誰も歩かないのか、次第に草も多く、藪もひどくなってきた。
 


多少のことなら強引に突破するつもりであったが、どうやらルートもあやしく、早々と戻ることに。

戻って反対側のルートから再度アタック。峠は誰もいなく、薄暗い切り通し状になっていた。


峠を示すものは何もなかったが、こちら側は道幅も広く、まだまだ使われている峠道であることがわかる。

寄り道をして、いつもの峠越えを味わったところで、なんと携帯が鳴った。


出かける前は、何事も起こらないように万全の体制で出発するのだが、トラブルはこちらのことなど関係なしに突然やってくる。

ちょっとしたトラブルで、電話で解決できたので一安心。

携帯などない時代だったら、こんな旅先で仕事を思い出すこともなかったが、まあ今の時代、サラリーマンの宿命として割り切るしかない。
 


さすがに四万十川も延々走ってくると、さすがに同じような風景に飽きがくるのも事実だ。

しかし、この長さ、この退屈さ、この平坦さがなかなか味わえないのも事実だ。


ロードで快走してはもったいない、MTBで重々しく走る道でもない。

やはりここは35Bランドナーで、時間をかけ、のんびり走る所だ。


中村の駅へ辿り着く。

90キロ近い走行距離になっている。これだけでもかなりの充実感だ。
 


締めくくりには、この駅で「名物仙人」に出会った。

白装束に身を包んだ、一見、霊場巡りをしている人かと思えるのであるが、輪行の準備をしていると、すかさずやってきて、我がランドナーをジロジロと眺めはじめた。


またいつものように、物珍らしさの見物かと思ったらそうではなかった。なんと開口一番、

「ほー、ランドナーだね」「珍しいねえ」

「最近はほとんど見ないねえ」「やっぱりこれが一番だな」 ときた。


むむ、おぬしなかなかできるな。だけど、まあこれぐらいの好き者は結構いる、と黙っていた。

「このセンタープルはどこのだ?」「このインフレーターは見たことがないなあ」「このサドルは一枚革か?」

「フレームは石渡か?」「ダブルバテットか?」「ガードは分割式にしないのか?」・・・・・ あらら・・・、なんだこいつは。


あまりに連続で憎いところと突いてきたので、とうとう本気で語り始めてしまった。

歳の頃、60ぐらいかな。多分サイクリストの間では有名に違いない。

まさに「仙人」だった。その後、MTBの女の子を見つけては、こちらのランドナーの解説をしていました。
 


 


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